第4話 てるてる坊主
ある雨の日の夜、AとBの2人の男が部屋で話していた。
「あのさぁ、てるてる坊主って何でてるてる坊主って言うか知ってる?」
「知らない。何で?」
Bはおもむろに話し始めた。
「いや、まぁ都市伝説として色んな話があんだけど、そのなかでも俺が聞いてビビったのが、昔、ある所で日照りが何日も続いて雨が降らなかった村があったらしいんだ。作物は育たないし、水は枯れるしで飢饉に襲われたんだと。それで、耐えかねたその村の長老が、雨乞いの儀式をしようって言ったらしいんだ」
「まぁ、昔ならよくあるよな」
「でもここからが普通じゃないんだよ。恐ろしいことに、その長老がなんと生贄を出そうって言い出したんだ」
外では雨の勢いが強まったのか、激しく家の窓に打ち付ける音がしていた。
「じゃあ誰がなる? って話になって、話し合いの結果、村一番の働き者のテルって青年に決まったんだ」
「何で? 普通は村一番のサボり者とかじゃないの?」
「そう思うだろ? でも長老の考え方は、少しでも村に有益のある人を差し出せば、神はきっと叶えてくれるって考え方だったんだ」
雨足は強くなる一方で、まるでゲリラ豪雨の如く降っていた。
「なんだよそれ、ひっでぇな。今じゃ考えらんないよ」
「だろ? それで彼が寝静まった頃を見計らって、大人が何人も忍びこんで彼を誘拐した」
「それで?」
「それで彼は祭壇の前まで連れていかれて、そこで首を吊るされて死んだんだ。で、その時の彼の頭が坊主」
「ふーん。それでテルテル坊主の由来は終わり?」
外は雨足が遠のき、少し小雨になっていた。
「いや、まだあるよ。それで見事雨が降ってその村は助かった」
「なにそれ。ハッピーエンド?」
「まてまて、まだ終わりじゃないぞ。その日から雨が降っている日には、部屋のどこかに急に首を吊っているテルが現れて、夜な夜な呻いていたんだとよ。だから今でもその村じゃ、雨の日には首を吊るされているテルが化けてでるんだと。これがてるてる坊主の伝説だ」
「結局怖い話かい」
Bはしてやったりといったように笑った。
いつの間にか外の雨は止んでいた。
「お、外も止んだみたいだし、帰ろうかな」
「え〜このタイミングで……?」
「テルが出るかもしれんから気を付けろよ?」
「出るか。アホめ」
Bはニヤリと笑って帰っていった。
Aは1人部屋に取り残された。
「余計なこと言いやがって。俺が恐がりなの知ってて話したな。テルなんか現れてたまるか」
Aはブツブツ文句を垂れながら、飲み物を取るために冷蔵庫に向かった。
すると、ベランダの方から紐がギシッギシッと軋むような音が聞こえてきた。
「いや、ないないない。そんなベタなのあるわけない」
そう言いながらも、Aの足はベランダの方へと向かっていた。
気づけば外は再び雨が降り出していた。
Aはベランダへと近づき、閉じられているカーテンを掴んだ。
徐々に雨足が強くなる。
雷が鳴っているような音もする。
そして、Aは意を決してカーテンを開けた!
Aの目の前には、窓越しにベランダで首を吊っている坊主姿の男が、じっとこちらを見つめていた。
「うああああああああああああああああああ!!!!!!」
その後の外は、台風なみのどしゃ降りとなっていた…………。
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その頃、Bはとある博士の元にいた。
「どうでしたか? 実験の方は」
「うむ。見事成功だな。彼の心情に合わせて天候を変化させることができた。将来的には全人口の心情に合わせて天候を操ることも可能だ」
「やりましたね。それでAは?」
「うむ。泡吹いて倒れとる」
「あららら……今度謝りに行かなきゃ」
「まぁ、大きな科学の一歩のためには生贄は付き物じゃからな」
「別に死んでませんけどね。彼」
そして彼らは、今日も新たな研究へと勤(いそ)しんだ
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