(罰)

 彼女は飛び降りてから死ぬまでに、ひどく苦しんだらしい。

 四階建ての学校では、飛び降りをするには少し低かったのだ。彼女は身体中のいたるところの骨を折って、けれど半日ほどの間生きていたそうだ。その間、痛みに苛まれ、苦しみに耐え続けなくてはならなかった。

 それは、罰なのだろうか。魔女の掟を破った罰。あるいは、彼女の行いそのものに対する罰。

 それからしばらくして、彼女の父親が捕まった。詳しいことは知らない。彼女が残した遺書から、彼女の父親は逮捕されたということだった。

 遺書によると、彼女は父親から虐待を受けていたらしい。下らない人間が喜びそうな、ひどい虐待だったということだ。そこには性的なものも含められていた。

 けれど同時に、彼女の父親は彼女のことを愛してもいたらしい。彼女が友達からいじめられていると知ったとき、父親はその友達を自殺に見せかけて殺した。彼女はそのことも知っていたらしい。

 そうしたことが書かれた遺書をつきつけられたとき、彼女の父親は全面的にそのことを認めた。否定もしなかったし、何の釈明もしない。

 学校ではしばらくの間、その話題で持ちきりだった。誰もが信じられないと言い、誰もが眉をひそめ、その裏で誰もがひそひそと勝手な憶測を囁きあっていた。

 ぼくとしては、それはどうでもいいことだった。

 彼女の父親は彼女のことを本当に愛していたのかもしれないし、噂話をする人々は本当に胸を痛めているのかもしれない。

 でもそんなのは、どうでもいいことなのだ。

 彼女はどこにもいなくなった。

 ――ただ、それだけなのだ。

 ぼくは時々、彼女が別の星の、自分の本当の家にいるところを想像してみる。

 彼女はそこで、幸せに暮らしているのだろうか?

 そうであればいいと、ぼくは思う。本当に、心から。

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