地図に載らない街

虹室 桜智

プロローグ

ノックが聞こえた。私は扉に背を向けたまま、返事をした。古いこの屋敷らしい音を立て、扉が開いた。

「◯◯様、手続きが完了いたしました。」

後ろで、佐々木の声が聞こえた。

「ご苦労だったな。今日はもう休め。」

「はい。」

足音が遠ざかり、失礼しますという声と頭を下げた気配、扉が閉まる音がした。

「これで、全てが揃った。」

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