第二十一話 リュキア、花売りと再会する

其の一

 春深まる季節。最近ではめっきり日の昇る間ならずとも寒気らしい寒気を感じなくなる。深夜でも出歩くには困難しなくなり、夜の時間は短くなるが「夜の時間」は長くなる、そんな時節が始まる頃であった。


 老舗呉服店の次男坊ドンファンもまた、この春の夜を楽しいでいた。潤沢な資金を盾に夜の蝶を相手取り浮名を流す御曹司。いや、浮名を流すと言うには粗野が過ぎるか、金と地位に物を言わせた強引な駆け引きの多い男であった。その後始末に実家が動くことも数知れず、そしてそれと同じ数の女を泣かせてきた。そして今しがたも、無理やり同伴に付き合わせたエルフの商売女と別れて家に帰るところであった。



「ちょいとそこなお兄さん。」



 そう帰り道のドンファンを呼び止めたのは、店頭の客引きのような張りのある大声ではなく、内緒話をするかのようなごにょごにょした声であった。声のほうを向けば人目のない路地裏。普通なら気味悪く思うところだが、夜の街の勝手知ったるドンファンはためらいなく脇道へと逸れて行った。


 そこにいたのはエルフの娘。みすぼらしいが二の腕や太腿がチラチラと見える衣装はそこはかとなく艶めかしい。手にした籠の中には、種々様々な花が入っている。



「『お花』買って行きませんか?」



 成程、やはり「花売り」か―――娘の問いかけにドンファンは舌なめずりをした。夜の街での花売りと言えばただの露天商ではない。言ってしまえば路上で体を売って金を得る女の隠語だ。見ればこのエルフ、同族の中でもかなり美形の部類に入る。美しいブロンドのロングヘア―、切れ長の瞳、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだプロポーション。「花売り」にしては小綺麗すぎるきらいがあるがそんな疑念も吹き飛ぶほどに魅力的だ。


「じゃあ、ひとつ貰おうかな。」

「はい。では少々お待ちくださいな。」


 普段はこういう所在の知れぬ女を買うことは無いのだが、目の前の娘の美しさを前にしてドンファンは蜜を求める蜂が如く吸い寄せられた。エルフの娘はそれに応じ、便宜上の売り物である花を渡すべく籠を弄る。



 その瞬間、ひゅんっ、と籠の中から何かが飛び出した。細長い緑の紐、蔦だ。蔦は助平心を丸出しにして覗き込んだドンファンの首に取り付き、樹木に絡むかのように巻き付いた。その締め付けは彼の気道、彼の声帯をじわじわと締め付ける。息苦しさのあまり助けを呼ぼうにも最早声も出ない。ドンファンの顔はみるみるうちに真っ赤になっていく。


 しかし、程なくしてその赤ら顔は、まるで真逆の青白い色へと変化を遂げた。心臓の脈動が止まり、血の気が引いた―――つまりは死、である。蔦がしゅしゅると籠の中へ引っ込むと、ドンファンの身体は静かに地面に突っ伏す。遠くではまだ夜の街の喧騒が聞こえる中、実に静かにその生の幕を下ろしたのだった。


 そしてエルフの娘は、ドンファンの遺骸をゴミを見るかのような目で一瞥すると、路地裏の闇のさらに奥へと姿を消していくのだった。






「これはまた、なんというか…」

「まあ、いつかはこうなるんじゃないかとは思ってましたけどね…」


 翌朝、早いうちから既にドンファンの遺体は通報を受け州衛士屯所に送られていた。見るも無残な絞死体、しかし州衛士たちの反応は冷ややかだった。彼の女癖の悪さはそれなりに有名、そんな人間が夜の色町で殺されたとあってはお察しというものだろう。


「十中八九、痴情のもつれでしょうな。」

「それ以外に考えようも無いでしょう。カーナさん、ご家族は何と?」

「『出来るだけ内密にお願いします』とだけ…」

「まあ、仕方ないですよねぇ。」


 ドンファンの実家への報告から帰ってきた州衛士カーナの返事を聞いたベアは、ため息をついた。息子の死というショッキングな報にもかかわらず、家族の返事がこれなのだ。哀れと思いながらも、見放されるに足ることを積み重ねてきたことを知っていると自業自得と断ぜざるを得ない。恐らくこの一件も適当に捜査してそのまま打ち切ることになるだろう。朝の慌ただしさから一転、屯所の中の空気が一気に緩慢になる。ただひとり、マシュー・ベルモンドを除いて。






「よォ神父様。」

「やれやれベルモンドさん、今日もまたですか?私どもは明日の賓客を迎える準備で忙しいのですが。」


 正午が過ぎ、外回りに就いたマシューの足は真っ先に教会へと向かっていた。いつもと変わらぬ来客に神父も呆れ顔で出迎える。しかし、マシューの面持ちはただサボりに来ただけというには深刻過ぎるものだった。


「まあそれもあるんだがよォ、リュキアの奴はどこ行った?」

「リュキアですか?あの娘なら裏の林まで焚き木を拾いに行きましたよ。それがどうかなされましたか?」

「ちょいと、な。それと昨晩勝手に出歩いたりもしてねェよな?」

「私の覚えのある範囲ではそういったことは無いと思いますが…一体どうなさいました?」


 勝手知ったる感じで聖堂の椅子に座るマシューだが、いつもとは様子が違う。流石に神父も気になって問いかけた。


「呉服屋のドンファンが殺されたって話は耳にしてるか?」

「ええ。明後日にも密葬の予定が入っていますが、それがどうか?」

「奴さんの死体な、首に絞められたような跡が残ってたんだよ…」


 リュキアはかつて「エルフの怨霊」と呼ばれ、夜の街を中心に女衒相手にあてもない殺しを続けてきた。WORKMANとなった今でも、不純な男性に対する嫌悪感には人一倍敏感な娘だ。そこにきて今回の女泣かせの絞殺体である。マシューが彼女の独断専行を疑うのも無理からぬことである。


 しかし神父はその懸念を一笑に付した。彼には、今のリュキアがそのようなことをする筈が無いという確証があったからだ。


「なるほど。それでベルモンドさんはリュキアを疑っていると。それはまずあり得ませんからご心配なさらず。むしろ勝手な行動をとるくらいの気概が戻ってきてほしいと思っているくらいなのですから…」

「ん?どういうこった?」






 教会の裏手の林に、神父が言った通りリュキアはいた。しかしその様子は、焚き木広いとはかけ離れたものだった。まず恰好が違う。日がまだ上っているうちにも関わらず、その恰好は表仕事の修道服ではなく、裏仕事で使う露出の高い革装束だった。そしてその雰囲気も、まるで裏仕事に臨むかのように殺気立っていた。


 ひゅんっ、と右手の先から黒糸が飛んだ。目指す先は木々の枝に的代わりに立てかけられた薪の数々。その一つ一つに的確に黒糸を巻き付けては放り投げる、そのような修練を繰り返していた。


 本来リュキアはこのような修練には無縁である。輝世暦172年に初めて人を殺めて以来、誰に教わるでもなく我流で殺しの技を磨き突けた、幸か不幸かこの道の才女なのだ。特段日々の訓練を積まずとも今日の今日までやってこられた。そんな彼女が、ある種の焦りを覚えながらかような訓練に興じるには理由があったのだ。


 ワノクニの剣客・浪岡小源太、そしてHELPMANドラド・ズバルド。彼女の才覚を越え、あっさりと返り討つ者が立て続けに現れた、それが彼女の焦りの原因であった。そしてそんな「焦り」そのものも、平静・冷徹を心がける彼女にとっては慣れぬ感情だ。敗北の悔しさか、それとも自身のレベルアップの必要性か、その感情の出所も掴めぬまま、リュキアは苛立ちにも近い気持ちを薪にぶつけていた。


 そのような感情では手元が狂うのも已む無きことなのか、彼女は最後の一発を外した。黒糸がかすめただけの薪はバランスを崩しただ無常に落下する。らしからぬミスにリュキアが動揺した瞬間、どこからともなく緑の紐が飛び、落ち行く薪を絡めとった。リュキアがそれを植物の一種と認識するや否や、大樹を巻き殺すかのようにその蔦は薪を締め上げ粉砕する。



「どうした?糸使いに焦りが見えるわ。あの頃のアンタならこのような動かぬ的を外すことなどあり得なかった筈だけど?」

「………!?」



 木々の奥から、右手に蔦を巻いた女が姿を現した。長い耳、長く美しい髪はまさにエルフそのもの。そしてダークエルフのリュキアも、この近似種の娘と面識があった。


「………マーシャ。」

「久しいわねリュキア。140有余年ぶりかしら。」


 そのマーシャという娘は、裏の仕事着であるリュキアに何ら疑問を持たず、彼女のそばに寄って行った。






「懐かしいわね。ふたり並び立ち『エルフの怨霊』と呼ばれたあの頃。私たちで何人の男を闇に葬ったものか。」

「………え、ええ。まあ。」


 適当な切り株に腰掛け、物騒な思い出を振り返るマーシャ。しかしリュキアの返事は歯切れが悪い。別に思い出したくない過去をほじくられて気を悪くしているわけではない。ただその頃の記憶が曖昧なだけなのだ。姉と離れ離れになったショックで呆然自失となっていたところを、黒糸に宿る怨嗟のようなものに突き動かされていた。正直マーシャについても記憶の断片が残っているだけで、馴れ馴れしく話しかけられるほどの交友をした覚えはなかったりするのだが。


「あの時は驚いたわ。私のほかにも同族を売る女衒を殺して回る者がいるなんて夢にも思わなかったよ。お互いに絞め技だから、いい捜査の攪乱にもなったし。」

「………へぇ。」

「かのエルフ狩りにあって、植物を操る異能を持つ我らイヴォンの村が真っ先に人間の手によって攻め込まれたのは必定。卑劣にも数で押し通す戦術に敗れたものの、私は絶対にその時の遺恨忘れはしない…」

「………」


 聞き手はただ相槌を打つだけにも関わらず、マーシャはひとりで語り続けた。その話を聞くうちに、リュキアの中のおぼろげな記憶もやがて鮮明になっていく。確かに自分がエルフの怨霊と呼ばれていた時代に、似たようなことをして回る殺し屋ということでそれなりに面を合わせる機会も多かった。その瞳には他種族への、そしてとりわけ男性に対する憎悪が渦巻いていたことを覚えている。


「………ところで貴女はいつからここに?」

「つい三日前よ。狙っていた獲物がこのザカールに流れ着いたという噂を聞いてね。ついでに昨晩はウォーミングアップ代わりに女泣かせと噂高い外道を一匹血祭りにあげたけど。」

「………ははは。」


 こともなげに衝動殺人を誇るマーシャを前に、リュキアも思わず乾いた笑いが出た。あの当時見た憎悪の光は、今もなお目の前の娘の瞳に変わることなく宿っている。いや、あの頃の自分の瞳もそう変わらなかっただろう。あるいは神父と出会わねば、自分も目の前の娘を笑えない立場にいたのかもしれない。そう思うとリュキアも心苦しく思った。尤も、今の「仕事」も五十歩百歩ではあるのだが。


「そうそう。それに関連する形で、アンタにも用があったんだ。ちょうどこの州にいるみたいだと聞いててさ。」

「………私に?」

「そう、単刀直入に言ってしまえば、今回の殺しを手伝って欲しい。何せ相手はあの『送り狼』なんだから。」


 「送り狼」―――その名を聞いてリュキアは驚く。大陸全土で牙を剥き、初犯より3年の間未だ捕捉すらされない婦女暴行殺人犯、それが「送り狼」。その神出鬼没ぶりから、やれ複数犯だ、やれ権力者によって情報が統制されてるだ、いや存在すらしていないのでは、などとの噂が立ちながら今や若い女性に対する恐怖のアイコンとして君臨する存在だ。それが実在し、今この州にいるというのなら女として、いや大ラグナントに生きる民として斃さねばならないと思う。しかし―――



「………ごめん、手伝えない。」

「あら、どうしたの?怖気付いたの?同族にも被害者はいっぱいいるのよ。あの頃のアナタなら殺気丸出しで同意してくれるところなのに。」

「………まあ色々あって。」

「腕が落ちているってことなら私は気にしないわ。あくまで主動は私、あなたはサポートに回ってくれればいいから。」

「………いや、そうじゃなくて今の『仕事』だと―――」

「『仕事』?そういえばアナタ、今何してるのよ?」


 遠回しに拒否を示すリュキアだが、その思わせぶりな態度が逆にマーシャの気を引いた。口の回るほうではない彼女にすれば、隠し事も一苦労である。そうやってしどろもどろになっていると、およそ最悪な形で「仕事」の仲間がやって来た。




「おういたいた。リュキア、探したぜ。ところで昨晩のドンファン殺しの件だけどよォ―――」



 小柄な癖っ毛の男が、ざっかけのない態度でリュキアに話しかけてきた。人気の無いこのような林に用のある人間がいるというのも不自然ではあるが、何よりもマーシャを驚かせたのはこの男の恰好であった。州衛士隊支給の革鎧、本来的には殺し屋とは敵対する位置にある職の男だったのだ。尋ねてきたことも心当たりが大有りである。


 マーシャの足元の蔦が蠢く。次の瞬間には反射的に口封じに走っていた。慌ててリュキアが割り込み止める。そしていきり立つマーシャをひとまずさておいて、州衛士姿の男・マシューに珍しく大声で怒鳴った。


「………なっ、何言ってるんだお前!?それに第三者がいるのにいつもの余所行きの喋り方は!?」

「あ?どう見てもカタギじゃねえだろそこの姉ちゃん。なら裏の顔秘密にすんのも面倒くせェしな。日頃アレで通すのも結構精神力すり減るんだぜ?」


 首をコキコキと鳴らしながら、気だるそうにマシューは古代レブノール訛り全開で答えた。それこそいつもの余所行きの喋り方だったのなら誤魔化しようもあったのだが、こういう時に限って勘が良く働くものだ。奔放で独りを好むリュキアは、この時生まれて初めて人間関係による胃痛を感じていた。


 そんなリュキアの制止も空しく、蔦が宙を舞った。しかしマシューは得意の足運びでこれを難なく躱す。蔦は背後の樹木の枝に絡みつき、決して細くないその枝を容易に締め砕いた。


「何者だ、貴様!?ただの州衛士ではないな!」

「面白ェ技を使うじゃねェか。なるほど今朝の殺しはリュキアじゃなくてコイツの仕業と見て相違無さそうだな。しょっぴいて点数稼ぎにしてやろうかァ?」



「………この娘はマーシャと言って昔の仲間!こっちがマシューと言って今の仲間!わかった!?」



 暗殺者同士の殺気がぶつかり合い林の中の空気が凍り付く。そんな一触即発の事態を収拾すべく、リュキアは慣れぬ大声で割って入った。彼女を知る者からすれば違和感しかないその姿に、ようやく相対する二人は殺気を緩めるのだった。






「つまりこの姉ちゃんと組んで例の『エルフの怨霊』をやってたってわけかい?まあ、俺の生まれる前の話すぎていまいちピンとこねェけど。」


 リュキアは比較的物わかりの良いマシューへの説明を先行させた。長命種ではない彼に140数年前のことを伝えても理解しきれぬだろうが、マシューはまあそういうものだと噛み砕いて納得していた。一方でマーシャは、説明を受ける前から納得しきらない表情を浮かべている。


「今はこの人間の男と組んでいる、と?」

「………厳密にはあと三人。ハーフリングと、人間とは思えない人間と、ただのクオータービーストにしか見えない魔族。」

「?…よくわからないけど、ともかく別種族の連中に組みしているのね。」


 マーシャの視線は冷ややかだった。これがリュキアが現状を話すことを拒んだ理由である。頑なに同族の怨恨のみを原動力にし、またリュキアも同類だと思い込んでいる彼女に今の「仕事」のことを話せばどう思われるかなど容易に想像ができよう。


「………WORKMAN、あなたもこの世界に身を置くなら名前は聞いたことがあると思う。それが今の私の『仕事』。」

「WORKMAN…確か、この世のあまねく恨みを晴らすことのみを目的とした凄腕の暗殺ギルド、だったわね。」


 業界でも秘中の秘と言われる存在、そのようなギルドに旧知の仲が籍を置いていると聞いてもマーシャの反応は薄かった。彼女の気になることはもっと別の方向にあったからだ。



「つまり今のアナタは、人間や他種族、ひいては男の恨みも聞き入れて殺しをしている。そういうことね?」



 リュキアが黙ってうなずくと、マーシャの眉は上がり切れ長の瞳はいっそう鋭さを増した。怒り・呆れ・不快感、そういったものがないまぜになった視線がリュキアを苛む。


「………エルフの頼み人もいる。」

「ケースの話をしてるんじゃないわよ。アナタ、あのエルフ狩りの渦中にいたんでしょ?そんな体験をしながら、よく他種族の願いなんて聞けたものね!」


「随分と典型的なエルフの姉ちゃんだなオイ…」


 リュキアをなじるマーシャの言い分を聞き、マシューは思わず小声で呟いた。エルフ族はプライドが高く自分たちを特別視している、というのは種族ジョークとしてよく言われることではあるが、五民平等が布かれ300年以上が過ぎた今のご時世にこれだけティピカルなエルフも珍しいものだ。そんな観衆のドン引きなどどこ吹く風で、マーシャの説教は続いた。


「アナタたちに頼みに来る連中がどれだけの恨みを抱えていようとも、エルフ族があの時被った怨嗟に比べれば微々たるものでしょうに!」

「………」

「そんな奴らの手助けにうつつを抜かす暇があるなら、もっとするべきことがあるんじゃなくて!?」

「………」

「アナタだって姉と離れ離れになったと言っていたじゃない!その時の恨みも忘れてしまったの!?」

「………!?」


「!?…おいコラ。」


 喧々ごうごうと詰め寄るマーシャと、黙り甘んじてその言葉を受け入れるかのようなリュキア。マシューはその様子を怖さ半分面白半分で眺めていたが、この一言が引っ掛かった。


 リュキアの姉はいつしか他人に恨みを買う立場となり、リュキア自身の手で「仕事」にかけられ死んだのだ。知らぬから仕方ないとはいえ、その業を思えば今の言葉がどれだけリュキアの心を抉ったかは想像できよう。さしものマシューも、仲間に対する軽率な発言に静かな怒りを覚えた。


 しかし、そんなマシューを制止したのはリュキア本人だった。左手を差し出し、身を乗り出そうとする彼を止める。うつむき加減でその表情は見えなかったが、マシューもその意を汲み歩を止めた。そんなWORKMAN側の動きなど知ったことかとばかりに、マーシャは一方的に話し続けている。




「リュキア、アナタの腕が鈍った理由、ようやくわかったわ。自分の怒りを忘れ、組織に首輪され、奉仕のような暗殺を続けていてはそうなるのも当然の事よ。」

「………!!」


「今の自分の弱さに苛立ちを感じているのなら、即刻WORKMANなど辞めて私と共に来なさい。あの頃のアナタに戻してあげるから。」




 そう言うとマーシャは右手を差し出した。突然風が吹き、周りの木々がざわざわと音を立てる。そのさざめきは、まるでマシューとリュキアの各々の動揺と同調するかのようだった。

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