社会人と小学生 2

 モンスターハンティングのゲームのイベント会場へとやってきた。

 友人達と別れ、ひとりプレイエリアの一角で椅子に座って休んでいる。


 すると、私に声を掛けてくる人が現れた。



「すいません、ここ空いています? 座ってもよろしいでしょうか?」


 それは30代後半から40代前半だろうか、私と似通った年齢の中年の男性だ。

 その柔らかい話し方からすると、おそらく会社員だろう。ややだらしない服装に親近感を覚える。


「どうぞどうぞ、空いてますよ。お疲れでしょう」


「いや、おもった以上に込んでいますね」


「私も驚きました。まだこんなに人気があるとは」


「失礼ですが、あなたはどれくらいからこのゲームに手を出しました?」


「モンスターハンティングドゥーですね、かなりの間、やってませんでしたが、最近また友人に吊られてやり始めました。」


「私は初代からです、それ以来細々とやり続けてます」


「おお、それはすごい。歴戦の勇者ですね」


「いや、たいしてはやっていないのです。浅く広くというやつです。

 今日もなんどかモンスターに負けてクエスト失敗してます」


 そういうと照れ笑いを浮かべる。このゲームは難易度が高いのでしょうがないだろう。

 ダメージの大きい攻撃を喰らうと、一撃で死ぬ事もままにある。


「このゲームで死ぬのでしょうが無いですよ。ところでどんなモンスターにやられたのです?」


「ヘビみたいなやつですよ鱗をとばして音で攻撃をしてくるヤツです、モンスターの名前は出てきませんが」


「ああ、あのモンスターですが、私も名前までは覚えてませんね」


 二人とも苦笑いを浮かべた。歳を取るとこういった事は覚えられなくなる。

 聞き慣れない発音のカタカナが7つか8つ並ぶと、もう完全にアウトである。覚える気すら起きない。

 だが、敵のモンスターの動きや弱点となると話しは別で、しっかりと覚えられている。記憶とは不思議なものだ。


 知らない人でも同じゲームをしているだけで友人のように会話ができる。

 今作の『モンスターハンティング ダブルエックス』について、歴戦の勇者は語り出した。


「そういえば、今作では、あのモンスターが復活しましたね。大きな竜の」


「ああ、懐かしい、あのモンスターですよね」


「昔は良く踏み潰されていました」


「今だと簡単に倒せますね。備え付けの弓や大砲を使うだけで勝てますよ」


「そうなんですか、新しい仕掛けには全然手を出して無くて」


「試しに戦ってみますか。討伐は無理でも撃退だけなら一人でもできますよ」


「本当に? それは知らなかった」


 ゲームの話に花が咲く。

 談笑をしていたら、類は友を呼ぶのだろうか。

 同じくらいの年齢の人が、また二人ほどやってきた。


「よければ、ここに座っても良いですか?」


「どうぞどうぞ」


 この広い会場を埋め尽くす若者たちの中で、偶然にもおっさん達だけが集まった。


 しばらく昔話で盛り上がった後、せっかく集まったのでパーティーを組んでハンティングを開始する事となる。

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