パンやの娘さん 3
ゆめちゃんの実家のガレージを、私とゆめちゃんのお父さんの素人二人でリフォームしようという事になった。
私は建築業界に従事していたが、大工という分野のスキルは未熟で、職人といえる存在にはほど遠い。
あくまで手伝い程度のモノしかできないが、それでも今回のリフォームは何とかなりそうだ。
ゆめちゃんのお父さん曰く『見てくれが悪くても構わない』とのことなので、最低限で安く留める予定だ。
まず、具体的にどこを直すのか検討をする。
照明は暗すぎて、本来ならなんとかしたいのだが、電気工事士の免許が無く、手出しは出来ないのであきらめる。
天井は屋根の柱と部材が直接見えていて、できるなら化粧板でも張りたいところなのだが、予算が掛るのであきらめる。
床もむき出しのコンクリートがそのままなので、木の床のパネルでも敷き詰めて、ウッドデッキでも組みたいところだが、必ずしも必要とは言えないのであきらめる。
あきらめてばかりで何もしないようだが、柱の補強と壁の施工はする。
壁さえ綺麗に整えてしまえば、他の部分は案外汚くても気にならない事が多いものだ。
現に天井の化粧板が無く、空調のダクトが丸見えの焼き肉屋などがあるが、それにケチを付ける人はほとんど居ないだろう。
幸い、工具に関しては家の押し入れに眠っていたのでコレを用いることにした。家の亡くなった父親の遺品だ。
当時、父はゴミ箱や本棚など簡単なモノは日曜大工で作ってくれた。今にして思えば私が建築業界に興味をもったのは、これが由来なのかもしれない。
リフォーム作業、初日
ゆめちゃんのお父さんと買い付けに行く、必要な部材とサイズは事前に私が見積もっておいた。
となり町のホームセンターで木材と金具を大量に買い込む、お値段およそ1万8千円。
木材に関してはカットサービスというものがあり、細い柱なら20円くらいで切ってくれる。
ノコギリは意外と体力がいるので、これを利用しない手はない。
買い物を済ませて帰ってくると、いよいよ本格的な作業に入る。
まずはガレージの柱に補強用の角材を付けていく。
本物の大工さんなら、ノミで器用にほぞ穴を作って組み上げていくのだが、素人のおっさんには出来ないの で、L字型の金具を使ってネジで止めていく簡単な作業だ。
見た目からは強度不足に感じるかもしれないが、この金具は耐震補強にも使われるものなので十分な強度を持っている。
こうして電動ドライバーでひたすらネジを止める作業を行うこと、およそ3時間、簡単ながら柱の補強が終わった。
リフォーム作業、二日目と三日目
事前に、となり町のホームセンターで発注していた内装ボードと断熱材が店に届く。
これは少々お高く合計金額7万円。もっとやすいベニヤでも良かったのだが、万が一を考えて耐火ボードを購入した。これなら隣の家が火事になっても多少は持ちこたえてくれるだろう。
内装ボードを押さえつけ、柱にネジで留めていくだけの作業なのだが、これがなかなか難しい。断熱材を間に挟み込みながら止めなければならないからだ。
ひとりがボード押さえつけ、もうひとりが断熱材を間に詰め込む。これが以外に難しく、あちらを押さえると、こちらから飛び出すといった様に上手くいかない。イライラしながらなんとか作業を進めていく。
そうやって作業を初めて3日目の夜。それなりの下地の壁が出来た。
「素人でも、綺麗にできるものですね」
ゆめちゃんのお父さんが満足げに言う。
「あとはこれに好きな壁紙を張れば完成です」
「これは素敵な空間になりそうだ、早くオープンしたいですな」
「そうですね、良い物が出来ました」
二人でちょっとした達成感と感動に浸っている。
本来ならココで缶ビールの一つで乾杯でもしたいところだが、私は外で禁酒を強いられているのでそれはできない。
しばらく壁を眺めた後、その日は解散となった。あとは壁紙を貼れば完成だ。
後日、壁紙を張ってリフォームは終了となるハズだったのだが、ささいなハプニングが起こる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます