Cross

狂音 みゆう

第一部 Parallel

孤独は人を壊し、憎悪は人を喰らう

少年

 美しい青年がまだ、「少年」と言われていた頃の話です。

 少年は勉強も運動もよくできる、いい子でした。

 今でさえ美しい彼ですが、少年の頃はかわいらしさを含んだ、中毒性のある美を持っていたと言えるでしょう。

 絹のように柔らかく、暖かい日差しを浴びた花のような赤みを帯びた朱色の髪。現在は長く指通りが良いものですが、当時は空から舞い降りた天使の羽を思わせるふわりとしたものでした。

 緋色ひいろの瞳には神秘的な雰囲気を感じさせる魅力があり、少し吊りあがった目尻も猫の様な愛らしさがありました。瞳を縁取ふちどる長い睫毛まつげは華やかな花の花弁かべんを思わせました。妖艶な蠱惑こわくすらも、幼少の時期から彼は持ち合わせていました。

 少年には少し雄弁ゆうべんなところがあり、それもまた彼の自信を象徴するような華やかな容姿にはよく似合いました。

 学問にも秀でていた少年の話は、聞く人の心に迫る、不思議な説得力がありました。


 …しかし、少年には重大な欠点がありました。

 両親も頭を抱えてしまう程のが。

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