15戦地
橘 ミコト
馴れ初め
「好きだ」
「私もです」
互いに一目惚れである。
まるで太陽の様に輝き光魔法を放つ黒髪の美少女魔導士と、まるで鬼神の様に吠え戦場を駆ける金髪の青年剣士。
二人は衆人環視の中で愛を囁いた。
「付き合ってくれ」
「喜んで」
目にも止まらぬ速さで繰り出される剣撃は魔法障壁で防がれながら、光魔法が世界を照らす。
「俺は小林猛。君は?」
「小湊光です」
しかし、他の者が見れば、その様子は演武か舞踏にしか見えない。
それほど優雅で、綺麗で、見る者の目を引き付け、そして美しかった。
「光、か。素敵な名前だ」
「あなたもピッタリの名前です。正に猛々しい剣そのもので」
睦言を囁く時の様に甘い空気が漂いながらも、二人は動きを止めることなく相手を倒そうと技を放ち続けていた。
光は猛を近づけさせまいと光魔法を放ち、猛は自身の体へステータスアップのスキルを施しながら一太刀浴びせようと光の隙を伺う。
「それなら、君は光魔法そのものだな」
「あら、それだと直ぐに消えてしまいますよ?」
「それは困るな」
「ふふっ」
しかし、いくら攻撃を繰り返しても相手にとっての致命傷にはならず、正しくショーの様な華々しさを周囲の者たちへ振りまいている。
それだけお互いの呼吸が合っており、尚且つ、想いが通じ合っていた。
つい先ほどが初対面など、誰が聞いても信じてくれないだろう。
猛が切りかかり、光が素晴らしい反応速度で魔法障壁を展開する。
バチバチと火花が散る様な閃光が辺りへ迸り、間近で顔を覗き込める距離であるにも関わらず、お互いの表情を見る事は叶わない。
お返しとばかりに光が魔法を放つが、猛は軽やかな動きでこれを避ける。
普段なら攻撃が当たらない事に対して苛立ちもするであろう状況だが、この時ばかりは二人とも興奮していた。
こんなにも自身の胸を締め付けるような存在など、今まで知らなかったのだから。
――それから2時間。
二人はあっちの世界で時間が許すまで戦い続けた。
――これが、No.1からNo.14までの陣営と、No.16からNo.29までの陣営で争うこの世界で、『15戦地の恋人』と皆から呼ばれる事となる二人の馴れ初めである。
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