レッツ ゴー トゥー スクール
南雲 達也
第1話 ひきこもりの一か月記念日
夏休みも終わり、九月に入ったからと言って夏の暑さがやわらぐはずもなく、今日も今日とて学校から帰ったら部屋にこもり、クーラー様の恩恵を受ける。クーラーを発明した人に何か賞を与えたい。あ、もうもらってるか。というか、クーラーって誰が作ったんだ。個人か?企業か?
冷たい風を全身に浴び、生きてるってすんばらしーと心の中で絶叫。しかし、自分にとって快適な時間というのは過ぎるのが早い。帰宅してカバンをその辺にほうりなげ(良い子はまねしないように!)、制服を脱ぎ散らかし(良い子はまねしないように!!)、クーラーの庇護下に入ったのが四時過ぎ。
わっと たいむ いず いっと なう?
首の可動域の油が足りないんじゃないかというような動きで、恐る恐る机の上のデジタル時計を見ると、七時五分十二秒。ワオ、三時間もすぎてやがる。これが時間跳躍かっ(くわっ)。
・・・・・・。
よし、そろそろ晩御飯の時間だな。シュクダイ?何それ美味しいの?
「あ、ちょうど良かった。もう食べられるわよ」
リビングに行くと、全世界笑顔コンテスト十三位に入りそうな笑顔で『彼女』が出迎えてくれた。灰色の上下のスウェットの上に、水色のエプロンをしている。何かの料理なのか、腰の辺りにドゥルっとしたものが付着している。
テーブルを見ると、豪勢な料理の数々。俺の好物ばかりだ。いい匂いが空腹のお腹を刺激し、自然と口の中に唾がわく。
「え、今日何かあったっけ?」
「もう、忘れちゃったの?今日が何の日か」
ほっぺたをふくらませながら、『彼女』は斜め後ろの壁に掛けてあるカレンダーを指さす。俺は猛抗議する腹の虫をパンチで黙らせ(これがホントの腹パン)、『彼女』の指し示す方を見る。
今日は、九月五日。何だ?マジでわからん。
「しょうがないわね。いい?今日は~なんと~」
どこかから、ドラムロールがながれてもおかしくないような間をとる『彼女』。
ドゥルルルルルルルルルルーーーーーーーーーー。うわ、自分で言い出しやがった。それにしても、巻き舌下手だな。ヅルルルルルルーになってる。
「ドン!今日は、一か月記念日デース!!」
「おお!・・・・・・・・・・・・おお?」
答を聞いても全然ピンとこない。二次関数の授業のほうがまだわかりやすい。いや、俺文系なんだけども。『彼女』も、俺が分かってないことに気付いたのかさっきの笑顔が八十パーセントオフくらいになっている。糖質か。
「そう・・・・・・。あなたにとって私は、その程度の女だったってことね。」
「いや、ちょっと待って!?さっきまであんなに朗らかだったのに、何でいきな り破局の危機みたくなってんの?てゆうか、俺たちカップルでも何でもないよね!?姉さん!」
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