第336話 『ピアノ五重奏曲ト短調』 シベリウス

 1890年に、ベルリン留学中に書かれた作品。


 長く、隠されていた(ご本人が、評価の低下を懸念して、隠したらしい。)若い時期の作品のひとつです。


 ただ、この曲は、1965年に、それまで演奏されずにいた、最終楽章が演奏されたとのことで、隠されてたわけではないのかも。(いや、そりゃ、だから、隠されてたんだろ!)


 シベリウス先生の作曲期間は、従来、『クレルヴォ』あたりから、第1期が始まるとされてきましたが、プロとして自立する前の作品がたくさん出てきたことから、その前に、もう1つのまとまった期間があった、と考えるようになってきているようであります。


 実際、この時期の作品は、『クレルヴォ』以後とは異なる作風を持っています。


 この曲は、そうした、初期作品のなかでも、とりわけの大曲。


 全体は、5楽章構成です。 


 厳しい雰囲気で、幻想的なところもある第1楽章。


 もっと、民謡の側に近い旋律もあるけれど、なかなか奥まで追いかけもしてやまない第2楽章。


 瞑想的な第3楽章は、シベリウス先生が、若い時期から、かなり内向的なものを追及していたことを知るべきだと思いますが、なぜか、ふと、少し、場違いみたいな民族音楽的、また、やや、シューベルトさん的フレーズが出てきます。


 こうしたあたりは、ご本人が世に出すのを認めなかった、ある種の、しっかり、統一されてない、ばらつきかもしれません?


 この感じは、初期作品には、よく感じられます。


 でも、それは、聞く側からすると、なかなか、良い旋律だし、展開のさせかたも面白いです。


 ときに、このゆったり楽章の主題は、しべ先生、ちゃんと残していたらしく、最晩年に取り出して、謎の『交響曲第8番』(書かれたことはほぼ間違いないが、破棄されたと、推測されております。)での利用が、画策されていたらしい。(スウェーデンBISのCD全集の解説参照。(第9巻、室内楽2)


 スケルツォ楽章は、短くあっさり味。


 その、終楽章は、なかなか、力のこもった、渾身の作品です。


 かなり、薄暗い情念が渦巻く、ミステリアスな音楽だ!


 独創的と言ってよい世界ですが、また、ついて行くのには、ちょとばかし、根性が必要です。


 最後の辺りは、楽器の能力から、はみ出しそう。


 恐れ入りました。




 ・・・・・・・・・・うつ 🌋 🌋 🌋 うつ・・・・・・・・・・・・・・

 

  




 


 


 

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