第285話 『ピアノソナタ ト長調 D894』 シューベルト
『幻想ソナタ』とも呼ばれる作品ですが、『癒し系うつうつ音楽』の大物さん。
そもそも、シューベ先生は、ピアノの名人という方ではなかったようですし(自分では弾けないものもあったとか。『さすらいびと幻想曲』など・・・)、名人芸を披露するという基本的な姿勢があるわけではないようですが、この曲なども、そういうかんじです。
頭から最後まで、ひたすら静かに物思いにひたるのです。
だから、やましんなどが、夜中に、どしたらよいか、まったく分からなくなるような場合に、大変、良く効くのです。
このあとの、イ長調D959と、変ロ長調D960は、もちろん本命ではありますが、あまりに素晴らしすぎて、やや感情過多に陥る危険性があるのですが、この曲の場合は、効果が抑制的に、静かに働くので、安心して使えるという、大きなメリットがあります。
しかも、かなり長いので、まあ、言ってみれば、点滴のような感じになります。
しかも、点滴のような、うっとおしい管もなく、身体を好きなように動かせるので、らくちんです。
専門家からの評価は非常に高いのですが、(たぶん)あまり、お客様から、拍手喝采という感じにはならない音楽で、最後の音も、静かに消えて行くので、ピアニストの方からすれば、お客様を多く呼ぶ、まねきねこ効果は、まず、そうは期待できません。
それでも、これは、なやめるやましんを、崖っぷちから、無理なく、ゆっくりと引き戻すという、(まあ、職場のとある元上司あたりからすれば、あまり面白くはないのかもしれませんが・・・『いっぺん死んでみっか?』と、突き落とされたのです。はい。)ありがたい効果があります。
もちろん、効果は個人差が大きいことは、言うまでもございません。
こうした、鎮静効果が高い音楽は、最近は敬遠されがちな気がしますです。はい。
『燃えたぎれ、わが社よ』とか、『今日も情熱爆発だ!』とか、そうした、スポーツ的カンフル剤的キャッチフレーズが流行る世の中ですから。(ま、むかしからですが・・・)
最近、とくに、こうした傾向は大きくなっているように思います。
これは、多分に、オリンピックを背景とした、社会的政策が背後にあることは容易に推測できます。
もちろん、スポーツをする方をあえて貶めるような気は、全くないのですが、多くの人が集まる場所が苦手な、やましんのような方は、それなりに存在し、また、オリンピックにも野球にもラグビーにも、ほんとは、さして興味がない、これまた、やましんみたいない方も、普通は遠慮して、決しておおっぴらに、そう、言いはしないけど、実はけっこう多いのではないかなあ、とも、勝手には思います。(違うかも。ラグビーは、おおむかし、すこし、やたことあります。完全食わず嫌いというわけでもないので………)
いずれ、『いまは、もう、ほっといてくれ~~~』というかたには、良い味方になるかもしれない、じっつに、良い音楽です。
専門家は別として、あまり理屈は考えなくても(もちろん、考えてもいいですが)よい種類の音楽かとも。
癒し度は高いが、適応範囲にやや難がある、音楽史上屈指の、名『うつうつ』ピアノ・ソナタのひとつです。
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