第209話 『楽園とペリ』 シューマン

 どこから切っても、どのような角度で切っても、シューマン先生の顔しか出てこないという、スーパー・金太郎飴みたいな傑作。


 シューマン先生、この種の範疇の作品では、同じくらいの規模がある『ゲーテのファウストによる情景』と、かなり小粒の『ばらの巡礼』を書いています。


 初演は、1843年12月4日。


 指揮はシューマン先生ご自身でしたが、この時が、指揮者としては、デビューだったんだそうであります。

 

 作品番号は、『50』。


 まだ、その悲劇的な最後までは、10年以上の期間が残っていた時期で、いかにもシューマン先生らしい音楽自体は、後の『ファウストの情景』と大いに通じるところがたくさん感じられますが、まだ馥郁とした香りが沢山漂っていて、さして差し迫った死の影は感じません。


 トマス・ムーアさまの『ララ・ルーク』にテキストを取った、おとぎ話し的な、いわゆる『オラトリオ』と呼ばれる音楽物語で、楽園を追われた妖精ペリの『ひとつ』か『ひとり』か・・・が、楽園に戻るために、入口の天使に気に入ってもらえる貢物を探して回るお話し。


 何が気に入られたのか・・・それは、ないしょです。(今は、ネットで調べたら直ぐに判りますけど・・・)


 最後は、ハッピーエンドな感じになるので、わりと、やれやれ・・・と安心しておうちに帰れる音楽。


 一方『ファウストの情景』は、ゲーテ先生の『ファウスト』がテキストですから、最後はとてつもなく意味深になり、人類すべてに謎をかけているような音楽なので(しかも、終結部分には、バージョンがふたつあるくらいで、シューマン先生はくたくたになりながら自殺未遂の直前まで、必死に書いた・・・)、あまり、うきうきではおうちに帰れず、電車の中で考え込んでしまう感じかな。


 でも、やましんは、この『ファウストの情景』が、実は大好きなんですけれども。


 一方、こちらは、後半に行くにしたがって、音楽の純度が高くなり、耳が離せなくなる気がします。


 初演以来大好評になり、現在でも、欧米ではけっこう人気が高い作品だと聞きますが、日本ではあまり受けないと言われてきた作品です。


 今はどうなんだろう?


 いささか、働きすぎ~~!!とか、自分達でも思い始めた昨今(やましんは、仕事行かずに、おうちに閉じこもりで、ひたすら書きたい時に、書きたいことを書いているだけの毎日ですが・・・)、世の中、いくらか、流れが変わってきているかも。それとも、あいかわらずかな。


 純粋な、お金や地位ではないものに、高い価値を見出す意義を示唆している作品です。


 シューマン先生、この曲を、日本で売り出すチャンスかも! (けっきょく、そこかい!)



 ********** うつ 🌼🌼😢🌼🌼 うつ **********










 

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