第95話 『アルペジョーネ・ソナタ』 シューベルト

 アルペジョーネはウイーンの楽器製造屋さんだった、ヨーハン・ゲオルグ・シュタウファーという方が1823年に発明した楽器です。


 大きさはチェロくらいで、ギターに似た形で、弦は6弦。フレットがついていて弓で弾く。


 シューベ先生は、この最新型楽器の教則本を書いた、シュスターという方の依頼で、1824年に、この曲を書いたようです。


 でも、この楽器は流行しないまま、消えてしまいました。


 楽器そのものは、現在も残っていて、実際にアルペジョーネを使って録音されたこの曲のCDも、かつては、出ておりました。


 この楽器の専門家の方という訳ではなかったようで、ちょっとやりにくそうな感じにも聞こえましたが、そこは貴重な録音です。


 しかし、現在は、主にチェロ、またはヴィオラで演奏されることが多く、例によってフルート用にも編曲されています。


 管弦楽を付けて、協奏曲のようにしたバージョンもありますし、ギターで伴奏することもあり。


 特に第3楽章の跳躍のところは、フルートで演奏するのはなかなか難しいところです。


 ときに、やましん、この曲も中学生時代から、しっかり、はまっておりました。


 まだ、発売されてそれほどは経っていなかった、ロストロポ-ヴィチさまのLPレコードを、ひたすら愛聴しておりましたのです。


 ピアノが、美しくも、うっとおしい主題を弾き始めます。


 10小節目から、独奏楽器が同じ主題を最初から引き継ぎます。


 第2主題は、一応、長調なんでしょうけれど、どうも、怪しい雰囲気を内包しております。


 それは、再現部で、その正体を現すことになります。


 悪魔的な、おどろおどろしい姿を見せるのです。


 最後は、もうヨタヨタになりながら集結します。


 第2楽章は、いかにもシューベ先生らしい、美しくも哀しいお歌です。


 ただ、この楽章、お歌のままに留まらない。


 伴奏部分が、複雑な転調を繰り返し、他所の世界にさまようのです。


 それが、ふわっと第3楽章で、この世に戻って来て、慰めのお歌を歌ってくれるのです。


 ときに優しく、ときに厳しく。ときに、ユーモラスに。


 最後は、いっぱい、いっぱい、やましんを慰めてくれて、遥かな彼方に帰って行くのです。


 現在絶好調で、さらに大望を抱く人には、物足りない音楽かも。


 しかし、いま、慰めが欲しい人には、最高の音楽です。


 


 ************  🍁 ************






 










 









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る