第54話 『ヴァイオリン協奏曲第3番』 サン=サーンス

 『しべこん』とほぼ並ぶくらいに、昔からやましんが大好きな音楽です。


 もちろん、有名曲なんでしょうけれども、どのくらい有名なのかは、ちょっと数


値化もできず、はてさて、分かりません。


 でも、すっばらしく、よい音楽です。


 第1楽章は、ラプソディックな第1主題で始まりますが、その第2主題は、ほと


んどもう、夢の世界です。再現部ではさらに繰り返しが付いて、いっそう挑発的に


素晴らしいです。


 第2楽章の主題は、夢を通り越してしまって、光でさえも届かない位に、はるか


な向こうの世界の感じかなあ。


 主題の旋律線の後半が、ぐわっと跳ね上がる形になっていることが、人間の心


に、おおきな憧れを抱かせるのです。


 それが、繰り返しながら、また転調したりして、変身してゆくので、いっそう効


果が高くなるのです。


 理屈は、たぶんそうなのでしょう。


 その終結部分は、これがまた、あまりにも、妖しいくらいに美しく印象的で、く


せになる音楽です。


 これは、サン=サン先生の作曲技法が素晴らしい。



 華やかさと麗しさが同居している第3楽章は、これまた実によく出来た音楽で、


やさしく静かな第2主題が、最終的に大きなフィナーレを形作るのは、ロマン派の


協奏曲では割とあることとは言え、とても感動的です。



 演奏の好みは、まあ、人によりけりでございまして、お亡くなりになった某音楽


評論の大巨匠様が、どうやらお好きではなかったらしい演奏(ヘンリク・シェリン


グ様が演奏した録音)が、やましんは大好きです。


 なんとなく、苦みばしったようなたたずまいが、ぼくはとっても好きなのです


が、これはつまらない、潤いのない音楽、とも取れるというわけですね。


 まあ、社会的な信頼性は、あきらかに巨匠のほうが、見えない位にはるかに高い


わけですが・・・これは好き好きと言う事ですから。


 それでも、これが特別な良い音楽だと言う事は、日本最高の音楽評論の大巨匠様


と一致していたわけで、何の面識もなくても、うつぎみで、職場からも逃げ出して


しまって、いまだに暗いお部屋にいつも引っ込みがちなやましんには、ちょっとだ


けなんだか、認められたような感じも勝手にして、なんとな~く、嬉しかったりも


します。


 まあ、妄想ですけれども。


 でも、これもまた、あまりに美しくも楽しい、素晴らしい傑作です。


 孤独な心を、じんわりと、慰めてもくれます。


 お聞きでない方は、機会があればぜひどうぞ。




 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る