第42話 『交響曲第9番』 ドヴォルザーク

 いうまでもなく『新世界交響曲』であります。


 でも、やましんは、これは『異世界交響曲』だと思っております。


 前にも、どっかで書いたような気がしますが、そこんところを、的確にとらえて文学に投入したのは、宮澤賢治さまでした。


 皆様よくご存じの『銀河鉄道の夜』においてです。


 おろかなやましんが、なんとなく思っているのは、この曲が表現しているのが、『単にアメリカやドヴォ先生の故国』とかの現世だけでは、どうも収まりがつかないなあ、と、いうことなのです。

 

 まあ、作曲家が、実際どこまで考えていたのか、演奏家がどう解釈するのか、聴衆がどう解釈するのか、の結果は、同じことにはなりません。


 そこが、音楽の面白いところなのです。


 ときに、荻谷由喜子さま著の『宮澤賢治の聞いたクラシック』に付属している、賢治さま所蔵のディスコ・グラフィー一覧を見ると、この曲のレコードについては二種類記載されています。


 ひとつは、パスターナック指揮のビクターコンサート管弦楽団(第2楽章の短縮版)、それと、ハーティ指揮のハルレ管弦楽団。ハーティさんは、ハミルトン・ハーティ様のことでしょう。


 付録のCDには、このパスターナックさん指揮の録音が収録されています。お宝音源です。


 この作品は1893年の作品ですが、初演は同年12月16日にニューヨークで行われ、大成功だったとか。


 一応曲全体の初録音は、1920年のランドン・ドナルド様指揮によるもの(全曲盤だが、あっちこっちカットされた短縮版)で、カットなしの全曲初録音が、1923年のハーティ様指揮によるものだそうですから(『クラシック名曲初演&初録音辞典 平林直哉氏著)、賢治様が持っていたのは、おそらくは、このレコードであリましょう。


 『銀河鉄道の夜』が書きはじめられたのは、1924年ころから、との事です。


 ただし、賢治様が、最初からこの曲を知っていたのかどうかはわかりませんが、当時の最新録音だったわけですね。


 ときに、このパスターナックさん指揮の録音は、1912年ということなので、

一部分の録音としては、かなり早い時期のものでありましょう。


 ええ、それはさておきまして、この有名な『第2楽章』は、とりわけ異世界的であります。


 最初の有名な「おうた」がでてくるあたりは、異世界への案内部分で、中間部から、終結部までは、やはり、もうすでに、この世のものではないという気がして仕方がございません。


 第3楽章も、かなり異世界的です。


 第4楽章は、いささか都会の喧騒のようだと言うご意見もあったようですし、なんとなく力業的な感じはありますが、そこはまた、それでよい音楽です。

 最終部分は、それこそ、なぜこうしたのかと考えてしまう不思議な終末で、だからこそ『異世界交響曲』なんじゃないかと、思うのです。


 この不思議な、『あとひき終結』は、アイディアとして秀逸だと言うよりも、そうじゃなければならなかったんだろう、と思います。


 これは、あの世からの、響きなのです。


 やましんが大好きなのは、コリン・デイビス様が指揮をした録音。


 誠実で、はったりも、誇張も、いきがりも、あやしい優越感もなく、何とも言えない中庸感が大好きです。(第1楽章の提示部が反復さてれいるのも、好きです!)


 もうひとつ、大昔に、多分(違うかも)新宿で買った正体不明の輸入ものCDで、すごくいいものがあったけれど、現在家庭内行方不明。

 聞いたこともない指揮者様でしたから、もしかしたら、ファントム・コンダクターさん(幽霊指揮者)だったのかも。※しかし、これも、特に何が、と言う事はまったくなく、誠実に楽譜通りに演奏していたものですが、そこが最高に素晴らしかったです。


 出て来てくださ~~い。


※ 出てきましたが・・・うーん、これは、ちょっと謎のCDかな? レーベルは『CASTLE』で、番号は、CRS CD 236、です。指揮者さまは、Tibor Laszlo さま。調べてはみたけど、スッキリしたデータが見当たりません。幽霊かしら?でも、演奏は、やはり、良い! 特に第2楽章が秀逸。




 



  

 



 

 

 




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