第2話  H. I.F.ビーバー:『ロザリオのソナタ』

 ビーバーさんと言っても、川にダムを作るビーバーさんでも、エアコンさんでも、お人形さんでも(?)ありません。


 ビーバーさんは1644年生まれで、1704年没。大バイオリン奏者で、作曲家という方です。


 この曲は、ビーバーさんの代表作でもあり、この時代を代表するバイオリン音楽の傑作ということでもありましょう。


 『ミステリー・ソナタ』とも呼ばれます。


 ぼくは、キリスト教徒でもなく、また自分さえ信じられない愚か者ではありますが、この音楽の美しさは、どうか信じてください。


       😇


 全体は16のソナタからなりたっていますが、15曲までは、キリストの生涯、その秘蹟を描くものという事で、最後に無伴奏の「パッサカリア」(スペイン起源の言葉だそうです。ギターで伴奏する歌の前奏や間奏部分のことから出ている。わかりますか? 実際に聞いてみないと分かりませんよねえ。)が置かれています。この最後の曲は、J.S.バッハさんの「無伴奏バイオリンソナタとパルティータ」の大先輩にあたる音楽です。


 けれども、16曲も連なっておりますと、全部聞くと2時間程度はかかります。ぼくのような、歳だけが増えて、おばかさまのひま人はともかく、なかなか2時間確保するのは、実際は大変だと思います。そこで、まずは『第1のソナタ』だけを聞いてみる、というスタンスでもよろしいのではないでしょうか。


 これが、まあ、なんとも、疲れた心に、じわっと染入る音楽なのです。


         👼

  

 出だしのあたりは、天使が「ばさばさばさ」と舞い降りてくるところかと思いますが、そのあと登場する旋律の、何という可憐でピュアな美しさでしょうか!


 この、『第1ソナタ』は、変奏曲の形になっておりますが、つづく変奏部分の中でも、重音で奏されるところは、さらに輪をかけた美しさです。ぼくは、ここを聞くことに、最高の喜びを感じるのです。このために、今日も生きていたのか! と。


 時間で言えば、第1番全部で5分足らずです。


 ただし、この第1番、演奏者によって、解釈がガラッと変わる部分でもあります。あくまで神秘的に、ゆっくりと弾く方もあれば、劇的にとらえて、速いテンポで引き抜く方もありますし、大幅に変化を付ける方もあれば、全体を平均的にまとめる方もあります。


 この幅の広さが、音楽演奏の面白いところです。

 そのあたりは、ほんとうに、好き好きなのです。


 この曲も、以前はなかなかの秘曲で、録音も少なかったのですが、ここ十年ほどの間に、どかっと増えました。

 それは、演奏家の技量と録音技術が、どんどん上がってゆくのと、聞き手が、この音楽のような、心をじっと静かに傾けられるものを、大いに求めていることの両方が、要因としてあるのだと思います。


         😇

 

 それが、現在の社会が不安定で、恐怖に満ちている事の現れの一端ならば、悲しい事ですが、でも、すでに作曲されて340年も経とうと言うこの時期に、一般に一躍知られることとなるのも、確かにご縁と言えばご縁です。

 CD二枚組だったりして、ちょっと聞こうかな、と買うには重たいかもしれないですが、なかなか、効果の高い音楽です。(個人差があります、しつこく書いてます・・・)

 ついでに言いますと、この第二番から後がまた、いいんですねえ。

 ぼくには、しんみり、じっくり、じゅわっーと、効きます。


 ・・・・・うつ 👼👼 うつ・・・・・・

 

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