ふしぎの世界のヅッチーノ

浅倉 茉白

第1話 ミート・ヅッチーノ

 ㅤ畳の上に、布団を敷いて。あぐらをかいて、寝転んだ。ついでに足の裏と裏を合わせると、土踏まずが綺麗な楕円を描いたから。左手の親指以外の四本を、穴の中へと突っ込んだ。


 ㅤそしたら何かに、触れられている気がした。


 ㅤ不気味さはあったけど、ふしぎと怖さはなかった。ついに親指も突っ込むと、せっかく描いた楕円が壊れると共に、明らかにオレは連れて行かれた。

 ㅤさっきまでと、何も変わらない景色。雑誌やマンガが溢れて、使わなくなった木の学習机の上にも城を築く。壊れた扇風機が下を向く。


「こんばんは。ヅッチーノだよ」


 ㅤ落ち着いた大人の女性のような、朗らかな少年のような、高い声。耳の中まで響いても、姿形は目に見えず。


「あなたの名前、なんてぇの」

「オレの名前は、有我ㅤ祷」

「ありがとう?ㅤどういたしまして」


 ㅤオレがどうかしているのか。コイツがおかしいのか。

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