異端破壊兵器レイヴン

葛白 ナヤ

第1話 手紙の先

その手紙が届いたのは、少しずつ雨の日が多くなる時期だった。

母が死んだと告げられたのは中学二年の事だった、父と母は仲が良かった、だが、母の仕事の事で喧嘩になり、別れてしまった。

小学三年にして俺は母親を失った、母は裁判で俺を引き取りたいと出たが受け入れてもらえず、高校卒業まで父親の実家で育った。祖母も祖父も厳しい人達だったがいい人達だった。高校卒業してからは一人暮らしをして、バイトをしながら専門学校に通った。

なんら変わらない日常を送っていた、友達もいて、腹立つ上司の愚痴を言い合ったり、何の変わらない日常を過ごしていた。


そんなある日の事だった。

この手紙が届いたのは、最初はいたずらかと思ったが消印は母が生きていたころ出されたものだった、死ぬギリギリの時に、これを出したのだろうか?

鍵と何処かの地図、そして短いメッセージだけが入っていた。


【ごめんなさい、貴方を巻き込んでしまって・・・あなたにしかできないからこれを託します

どうか、貴方に世界の加護があらんことを・・・】


メッセージにはそう書かれていた、何を言っているのか分からなかった、母は神様とか信じるような人だったかと思ったが、父には相談できなかった。

なんとなく、取り上げられてしまう気がしたからだ、父は母との思い出の物をすべて捨ててしまった、そのせいで俺の記憶には母の顔はぼんやりとしか出てこないのだ。

決心がつかず、迷ったが今日、俺はこの場所に行くことにした。


電車を二つ乗り換えて、見慣れぬ田舎道に迷いながら、それでも歩みを止めず歩いた。

息が切れて、水を飲む、こんなに山近くだとは知らなかった。


「・・・・ここ・・・か?」


その場所に着いた、山の入り口、すぐそばにある、築何十年は立っているであろうアパートだった、母が最後に住んでいた家だろうか、そう言えば母の遺留品はどこへ行ったのか、俺はまったく知らない、まぁ、きっと父がすべて処分してしまったのだろう、息子の俺に何の相談もしないで、捨ててしまったに違いない。

母は一人身だったと聞く、彼女は幼いころに災害で両親を失ったと聞いた。

仕事の話はしない人だった、それのせいで父と喧嘩になったのだが、いまさら何を言っても遅いのだ、鍵を出したままこうして立ち止まっていても、母はどこかの部屋から出てくることはないのだ


「208・・・・」


鍵についていたタグは部屋の番号だったようだ、左から八番目の部屋

もしかしたら、父に捨てられずに済んだ、母の遺留品があるかもしれないとカラ回った希望を出して、鍵を鍵穴に差し込んだ。

カチャリと音がして、扉を開ける。

中は薄暗く、部屋の奥からわずかな光が差し込んでいるだけ、ワンルームで、狭いキッチンがあるだけの部屋、電気とクローゼットが残っているだけの寂しい部屋


「やっぱり、何もないか・・・・」


忘れかけてしまった、母をずっと探していた。

もしかしたら、父に内緒で形見の一つでも、持って帰れるかもと思ったが、ここには何も残っていなかったようだった。


「・・・はぁ~・・・・ん?」


ため息を吐いてふと、クローゼットの方を見たとき、クローゼットの背と壁の間に何か挟まっているのが見えた、しゃがんではみ出したそれを掴んで外へと出す


「・・・・こ、れは・・・・」


埃塗れで色あせた画用紙、そこにはヘタクソな絵で描かれたヒーローと怪獣、そして、見覚えのあるような女の人が微笑む子供の絵、画用紙の端にまえだ、たかひこと書かれていた。

俺が幼いころに描いた絵だ、母と別れた時に父に捨てられたと思っていたが、母が持っていたとは、知らなかった。


「・・・・母さん」


この絵をどんな顔で見ていたのだろう、どんな思いでここに一人で住んでいたのだろう

想像するしかできない、今に悔しさが灯るばかりだった。

帰ろうと思って立ち上がったとき、首に強い衝撃が襲った。


「がっ・・・・・!!」


あまりの衝撃に耐えきれず、足は崩れ落ち、意識は暗闇へと落ちていく

うっすら見えたのは、テレビで見るような武装した数人の人だったという事だけだった。


「侵入者を捕縛しました、輸送をお願いします。」


武装した一人がどこかへと連絡を取った。



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