千載一遇の魔導書《グリモワール》〜忘れられし魔導書と異世界学園生活〜

未柊

第1棚 魔導書と少年の出会い

第1列 魔導書と少年と魔導学園ミルカリプス

1冊目 魔導書は尋ねたい。



——グギャァァ‼︎


私達、学園の限られた生徒達は

突然として現れたある魔物との戦いに明け暮れていた。



——炎雷龍 アルテア 。



アルテアは炎と雷電を自在に操り、過去には国を滅ぼした事もあるそうだ。


アルテアはその危険性からして神殿に封印されていた。

なぜ封印なのか。というと

歴史上誰ひとりを討伐、または手懐ける事が出来なかったからである。


何故アルテアと我らが戦わなくてはいけなくなったのか。

その理由はなんとも単純である。

約3000年続いて来た封印が解けたのだ。


我が学園のエリート達でも押さえ込むのが精一杯なのだ。

更に今回の移動ではなる者がいる。

流石に置いて行くわけにもいくまい。


このままだと全滅である。

どうするか——


「ぐあぁっ⁉︎」


「ディール⁉︎」


結界魔法を張っていた一人の生徒が弾き飛ばされる。



その時大きな馬車のようなものからひとりの少女が顔を出した。


『みんな‼︎もういいんじゃ‼︎早よ逃げてくれ‼︎』


少女は涙でぐしょぐしょになった顔で出来るだけ大きな声で叫んだ。


「そんな大きな声で叫んだら……‼︎」


大きな声で叫んだらアルテアがそちらに行く。

そう言おうとした。

アルテアは、少女を眼中を収めると空を飛び、

ブレスの準備を始めた。


そして2秒後——ブレスは完成した。


炎と雷撃が合わさったようなブレスは少女に向かってまっすぐに飛んで行く。


——残り3


「……うそでしょ。待って……」


——2


『みんな……


——1


ありがとう』


——0


バチィ‼︎


魔法が弾かれた音がした。


「こんな小さい子に手ェ出してんじゃねぇよ……」


ゾッとするほど底冷えした声だった。


この声はあの少女のものではない。

では、誰なんだ?


私は恐る恐る目を開いた。

そこには、1人の少年がいた。

少年は少女を横向きに抱え、片手を突き出している。

そして、少年は私の前まで来て、


「お姉さん。この子を頼みます」


と、軽い微笑をしながら言った。


「貴方は……‼︎何故‼︎笑っていられるのですか‼︎」


私は泣きながら抗議した。しかし、それ以上言葉は出なかった。


少年は静かに手の甲で私の涙を拭った。


「……え?」


私は少年が何故そんなことをしたのか分からなかった。

しかし、少し経って恥ずかしくなり、俯いた。


「さて、いっちょやりますか‼︎」


バンッ


その音で少年は空高くにいるアルテアの目の前まで飛翔した。

そして


よく見えなかったが強烈な物理を放った。


——グォギャァァ⁉︎

アルテアは何をされたのかわからなかったのか

真っ直ぐに地面に落ちている。


アルテアは地面に落ちる。誰もがそう思った。


アルテアの姿は地面に着く前に消えた。


生徒の一人が存在を確認しに行った。

そして。


「アルテアが……消えた……」


その瞬間、少年が空から降りてきた。

そして、頭を掻きながら言った。


「大丈夫ですか?お姉さん」


すっと座り込んでいる私に手を差し伸べる。


「あ、あぁ……」


私は少年の手を握り、身を起こした。


「あ、改めて、助けて貰ってありがとう。

私は魔導学園理事 ミラン=クロッツ」


「俺は——『お主か‼︎アルテアを一撃で消したというのは‼︎』


—————————————————————————————————


《と、いう訳でお主は死んだのじゃ》


「はい、ご丁寧に説明ありがとうございます」


俺はぺこりと頭をさげる。


《いいんじゃ、いいんじゃ。最近暇しておったからの。

一緒にお茶をしてくれるだけで感謝じゃ》


「俺で良ければいつでも」


俺がそう言うとお爺さんはホッホッホ愉快な子だのぉと笑った。



これまでの経緯を説明しよう。


俺は電車に轢かれ即死だったそうだ。

まだ記憶が曖昧で何を追いかけて線路に入ったか今でも思い出せない。


そんな時この転生課 課長の神様が拾ってくれたらしい。


魂の輝きが……とか何たら言って転生を勧めてきた。

そういう系のラノベは好きだったし、満更でもない。


「転生っていつやるんですか?」


《お主が望んだ時にいつでもできるぞ》


それから何気ない世間話をしていたが、ふと気になったことがあった。


「俺が行く異世界って魔法ありますか?」


《おぉ、あるぞ?しかし、女性しか使えないようじゃ》


それを聞いて俺はガックリと肩を落とした。

それがあからさまだったのか神様がすぐに口を開いた。


《あぁ、お主は使えるぞ?》


「マジですか⁉︎」


それだけでも聞けてよかった……。


《転生先の様子でも見るかの?》


「お願いします」


そう言うと神様は指を鳴らした。

すると目の前に大きなスクリーンのような物が現れた。


そして、スクリーンに映像が投影された時、俺は唖然とした。


ドラゴンだ。大きなドラゴンが四つほどの馬車を襲っている。


《ふむ、あれはアルテアじゃの》


「それは強いんですか?」


《あぁ。少なくとも原地人には神のような存在じゃろうな》


「原地人……には?」


《あぁ、お主ならばデコピンで勝てる》


「ドラゴンとは一体……」


《どうする?あのままじゃあの馬車は終わりじゃな》


俺は……悩まなかった。


「行かせてください‼︎」


《うむ。お主には加護を与えよう。しっかりと人の役に立ってこい‼︎》


「はい!神様、行ってまいります‼︎」


次の瞬間。俺は異世界へと転生した。


「おぉぉ‼︎異世界だよっ‼︎」


俺は異世界に転生したことが嬉しくて走り回った。

周りの景色が流れていたのは気のせいだ。気のせい。


「〜♪」


俺は不意に木を軽く叩いてみた。この世界の木の中が空洞か調べたかったのだ。


しかし、事態は予想の斜め上を行った。


俺が木に触れた瞬間木が吹き飛んだ。塵も残らずきっちりと。


「………………………………ん?」


俺は状況が読み込めず放心状態にあった。


「…………エエェェェェェェェェ⁉︎」


状況がわかってきた俺は自分が何をしたかよくわかった。

木に触れて気を吹き飛ばしたのだ。


——グギャァァ‼︎


ふと聞こえた。


そして思い出した。俺がここに来た理由を。


全力で走った。声の聞こえた方向へ。


「くっ……⁉︎」


その場についた俺は大きなドラゴン。アルテアといったか。


アルテアが放った炎と雷電が合わさったようなブレスが

少女に向かって飛んで行っている。

届かない。


——ピリリッ


頭の中で何かが弾けた。

俺は少女を抱え、右手を突き出した。


「《 消滅ヴァニッシュ 》」


——バチィ‼︎


ブレスが弾けた。いや、した。


「こんな小さい子に手ェ出してんじゃねえよ……」


すぐ近くにいかにも偉そうな人がいたので取り敢えず少女を預ける。


「お姉さん。この子をお願いします」


と、お姉さんに少女を預ける。


「貴方は……‼︎何故‼︎笑っていられるのですか‼︎」


お姉さんからの怒りを含んだ声。

ん?俺笑ってたか?


あ、あ〜あせっかく綺麗な顔してるのに涙で台無しだ。

俺はお姉さんの顔に手を伸ばし手の甲で涙を拭った。


「……え?」


お姉さんが何か言っているが気にしない。


「さて、いっちょやりますか‼︎」


俺はそう言うと地を蹴った。


そして、アルテアの前まで飛ぶ。


そして俺は必殺の一撃を放った。


「よい……しょぉ‼︎」


バシュゥゥゥ‼︎


「うおっ⁉︎こんなんデコピンじゃねぇ‼︎ロケランかそんな感じのだろ⁉︎」


——グォギャァァ‼︎


アルテアはそう叫び残して地面に落ちていった。


しかし途中でアルテアの体が光った。


(人の子よ)


頭の中に声が聞こえてくる。


(私は貴方に敗れました、アルテアと申します)


あ、敗れたって言っちゃうのね。


(あんなに惨敗をしたのですから当然です!

ましてデコピンでやられるなんて……)


あーなんかゴメン。


(良いです。取り敢えず私、地面に落ちたら完全に絶命するので)


一大事だった⁉︎


「おい、アルテア。お前を助けるにはどうしたらいい」


(……何を言っているのですか?私が死ぬのですよ?喜ばないのですか?)


「全くもって喜ばねぇよ。あと、早く教えろ」


(貴方のようなお人好しは初めてです。……では共有をしましょう)


「共有?」


(私が助かる最後の手段です。私の力、命を貴方と同化させます)


「OK。それで助かるんだな?」


(ええ。では行きます)


共有サクリファス


頭の中でひとつの単語が浮かんだ。


その瞬間落下中のアルテアが光って消滅した。


その光たちは俺の手あたりに集まってきた。


そして……一冊の本になった。


(私は今から貴方様の魔導書となりました。

不束者ですが何卒よろしくお願いいたします)


アルテアの声だ。


「よかった。助かったんだな」


(えぇ、貴方様のおかげでね)


「俺は修馬。榮倉 修馬エイクラ シュウマ


(では、修馬様、と。私のことはアルテアでいいですよ)


「よろしくな。アルテア」


(ええ、修馬様)


一通りの会話を終えた俺達は地上へ戻った。


「大丈夫ですか?お姉さん」


スッと彼女の前に手を伸ばす。


「あ、あぁ……」


彼女は俺の手を軽く握りながら起き上った。


「あ、改めて、助けて貰ってありがとう。

私は魔導学園理事 ミラン=クロッツ」


「俺は——『お主か‼︎アルテアを一撃で消したというのは‼︎』



(……マリさん?)



あぁ、これ絶対面倒くさいことになる。


そう確信した俺氏であった。


















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