メルトメリアの終末論。
遥音の杜
勇敢なる消えゆく者
ハハハ。
男は笑っていた。だが、皮肉やら憎悪の入った笑いと呼べない笑いだ。自分の四肢は折れたり切断されたりで使い物にならない。
空が透き通った蒼から血みどろの赤に変わっていく様子をただ、呆然と見ていた。
周囲には原型もとどめていない肉塊がゴロゴロ。
「皮肉にも飛べないもんだな…。」
男がそう言うと背中から生えている透き通った空色の羽が赤く染まりだし、あたり一面を凍らした。途端に周囲に群がっていた無数の“黒い影”を氷が飲み込んだ。
どこまでもどこまでも遠くまで凍らした。
遥か永劫までこの地の記憶を残しておくために。
「ごめんな…メリア。俺はもう無理みたいだ。中途半端で悪いが世代交代だ。」
そう言うと、男から青い靄が出てきたかと思うと遠く虚空に消えてしまった。
ありがとう。
男は笑っているような泣いてるような顔で静かに眠りについた。
誰も起こしてはくれず、自分では起きることのできない最後の眠りについた。
誰も知らない一人の勇敢な者の物語がここで幕を閉じた。
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