第12話 ラティアとランデブーだぜ
オウケイ! ラティアの位置さえ分かればこっちのもんだぜ。俺はナナハンエアをかっ飛ばしラティアの元へ向かう。二十分ほどでラティアと付き添う二人のウサギ耳の男女の元へ辿り着くと、彼らの前でナナハンエアを停車させる。
「ヘーイ! ラティア。少しぶりだな」
俺は片手を挙げご機嫌にラティアへ挨拶をすると、彼女はウサギ耳をペタンと頭につけたまま目をふさぐ。
「……私。もう健太郎と遊べません……」
絞り出すような声でラティアはうつむいたまま俺へと言葉を返す。
「何言ってんだよお。試練の道ってやつをちゃっちゃと終わらせて来たんだぜえ!」
俺の報告にラティアも付き添いの男女も目を見開き、口を金魚のようにパクパクしてるじゃねえか。そんなに驚くことじゃねえぜえ。俺にかかれば簡単なことなんだからなあ。
俺は驚きで固まったままの三人に、かいつまんで試練の道で何があったのか。試練の道の最後にいた岩の巨人からガタライト鉱石を入手し、祭壇に捧げたことを伝える。
「……とまあ。そんなわけだ」
「健太郎!」
ラティアは感極まったように俺へ抱き着いてくる。ヘーイ! モテる男は辛いねえ。
「ラティア。祭壇にガタライト鉱石を捧げたところまで話をしたよな」
俺は縋りついたままのラティアの頭を優しくなでながら、言い聞かせるように彼女へ説明を続ける。
「……はい」
「祭壇にガタライト鉱石を捧げたら……」
「……捧げたら、怪物が出たんですよね?」
「おう。そうだ。知っていたんだな」
ラティアは俺から離れると、生贄とマグマの虎の化け物について俺に説明をしてくれようとするが、俺は彼女の口を人差し指で抑えると、ひょいと彼女を抱え上げた。
真っ赤になり、されるがままになっている彼女をナナハンエアの後部座席に乗せ、俺もナナハンエアに
「話は後だ。奴が来やがったようだぜ!」
生贄の祭壇がある山の
「パパ。ママ。行ってくるね」
ラティアは付き添いの男女を意を決したように見つめると、男女は無言で深く頷く。
この二人はラティアの両親だったのか。心配するなって。俺がぜってえ奴を倒すからな。
「お二人さん。心配するなって。俺がきっとあの化け物を倒してやるからな!」
俺は二人に向かい手を振ると、ナナハンエアのハンドルを握り込む!
「ラティア! しっかり掴まっていろよお。落ち着いたらさっきの続きを聞かせてくれえ」
「……はい!」
ラティアは俺の腰に両腕を回すとギュッと力を入れる。
俺はナナハンエアを加速させながら、ゴーグルに地図を出し近くに湖か海はないか確認する……あるな……ラティアの住む街からナナハンエアでだいたい二時間ってとこか。
巨大な湖があるじゃねえか。よおし。ここを目指すぞ!
◇◇◇◇◇
マグマの虎はこちらへ接近しているようだったが、ナナハンエアの方が足が速いっぽいぜえ。このまま行けば追いつかれることなく湖まで到達できそうだぜ。
走りながら、ラティアは生贄とマグマの化け物について俺に教えてくれた。
灰色の耳と黒髪を持つ生贄候補はマグマの虎にとって食事として惹き付ける何かを持っているらしい。生まれた時からその力も体の成長とともに大きくなっていき、十八歳になる頃に力はピークを迎えるそうだ。
マグマの化け物が暴れないように、街へ襲撃してこないように生贄を捧げる。生贄を捕食したマグマの化け物は満足し、崖の下へと戻って行くそうだ。
奴の食事は一度食べたら暫く食べなくて良いみたいで、その期間は百年。百年を経過すると腹を空かせたマグマの化け物は生贄を待ち望むようになるってわけだ。
生贄で奴を引き付けて奴を倒そうと何度か街の住民が挑んだらしいが、まるで歯が立たなかったそうだ。
素直に生贄を差し出さす、奴を攻撃したら奴は生贄だけでなく、襲った人間全てを喰らいつくし、街を破壊してしまったという。
生贄を差し出さずにガタライト鉱石を捧げる手段は、試練の道にいる岩の巨人を倒すことができなかったってわけだな。
試練の道を突破することができないから、泣く泣く生贄を捧げるしかなくなったのだとラティアは悲しそうに呟く。
ガタライト鉱石を捧げても結果は同じ。奴は生贄になるラティアを優先的に探し喰らおうとしている。この分だと生贄を素直に捧げなくて多大な被害を出した過去と同じ末路をたどっちまうってわけだ。
岩の巨人もマグマの虎もこの星の武器では倒すことはできねえ。ブラザーが解析した結果を聞けば事情は分かると思うが、後回しだ。
被害なんて出させやしねえぜえ。俺がマグマの野郎をぶっ飛ばす!
二体の化け物を作った奴はどっちだ。この星の過去の文明か。それとも外から来た奴か。どっちにしてもぶっ飛ばしてやりてえが、何百年も前だからそれが出来ねえのが少し腹が立つぜ。
ラティアの話を聞いていたらもう湖が見えて来たぜえ! 地図の通り巨大な湖だ。
俺は湖の手前でナナハンエアを停車させると、いつでも発進できるようにエンジンはかけたままにしておく。
「ラティア。ここで待つぞ」
「ここに……怪物を引き寄せるんですね?」
「ああ。そうだぜ。マグマだったから少しは冷えるだろうと思ってなあ」
「行けるかもしれませんね!」
ラティアはパアッと笑顔になり、俺の背中に顔をつける。胸が俺の背中に当たるが……後数年したらいい感触になるんじゃねえかな?
湖は対岸が見えないほど広い。ここまで広ければマグマの熱で水が蒸発しきることもまずないだろう。さあ来やがれ!
いいところだったんだが、俺はふと違和感を覚える。
……何でラティア達はガタライト鉱石のことを知っているんだ? だってよ。ガタライト鉱石は岩の巨人を倒さねえと手に入らないんだろ。
「ラティア……今気が付いたんだが、ガタライト鉱石って手に入るものなのか?」
「……はい。高価ですが、百年以内に生贄が生まれなかった場合にはガタライト鉱石を捧げるんです」
「んーと。ガタライト鉱石を捧げても生贄は食べられるんだよな?」
「はい。優先的に襲ってきます。抵抗すると街に被害が……」
話がおかしな……引っかかる。
整理しようじゃえねか。ガタライト鉱石は高価だけど購入し準備することができる。これはいい。
なら、試練の道って意味なくねえか? だってよ。岩の巨人を倒して、試練の道を突破したとしてもよ……ガタライト鉱石が手に入るだけだぜ。
「ラティア。試練の道って一体何のためにあるんだ?」
「……私にも分からなくなりました。……岩の巨人までは私達も行ったことがあるんです……でも、倒せなかった……」
「まあ。それはいいってことよ。岩の巨人が落としたのはガタライト鉱石だったんだよな」
「……違う何かが手に入ると思っていました……ガタライト鉱石だと意味がありません……試練の道……私達は……勘違いしていたんでしょうか……」
さっき驚いていたのは、俺が岩の巨人を倒したってことにだけじゃあなかったんだな。岩の巨人がガタライト鉱石を落としたってことにもビックリしていたんだ。
「んー。ブラザーに後で聞いてみるか。おしゃべりはここまでのようだぜ」
どうやら、奴が来たようだぜえ。ゴーグルに熱反応を示すマーキングが映っている。
俺は反応があった方向へ目を凝らすと……
――マグマの虎がこちらへ駆けて来ている。 ナナハンエアより遅いとはいえ、チーターよりは早いな……十メートルを超える巨体があの速度で動いていると圧巻だぜ。
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