ヘーイ! 俺は銀河の風来坊(古典的SF冒険活劇)
うみ
第一クール 未開地惑星探査編
第1話 未開惑星に到着したぜえ
未開惑星とは宇宙へ自力で行けるほどの文明を持たない知的生命体がいる惑星のことを指す。俺はひょんなことから街で奴隷商人に
全くまいっちゃうよな。ブラザーはついでに現地文明を調査してこいとか言ってくるし。踏んだり蹴ったりだよ。全く。
でもな。いい男ってのは文句を言っちゃいけねえ。男は黙って背中で語るもんだぜ。
宇宙船ハニースマイル号で未開惑星に到着したのはいいが、未開惑星はちいと面倒なんだよな。決まり事って面倒な奴があってよお。現地知的生命体に宇宙船と接触させてはダメだってんだよ。
宇宙へ自力で行けるようになるまでは、宇宙へ出すなっていう事だ。
「嬢ちゃん。ちいと揺れるぜえ」
俺は隣のシートに座るウサギ耳の少女へ声をかける。ウサギ耳の少女は、そうだなあ……だいたい十六から十八くらいの小柄な体躯で、長いストレートの黒髪に前髪はパッツン。
彼女は奴隷商人に着せられた高校生のようなブレザーを着ていて、スカートは超ミニだ。太ももまである黒いタイツに、茶色のローファー。まあ、見た目は完全に女子高生だな。
そう……耳を除けばな……特徴的なのはウサギのような耳だ。髪は黒髪なんだけど、ウサギ耳に生えた体毛は灰色だから余計目立つんだ。
彼女は俺の言葉にギュッとシートベルトを握りしめる。
よおし行くぜえ! 大気圏!
宇宙船が大気圏に突入すると、強い揺れと負荷が俺達に襲い掛かる。
まあ、五分やそこらだ。
「少しの我慢だぜ。嬢ちゃん!」
「はい……」
少女は消え入りそうな声で体に更に力を込める。
宇宙船は無事大気圏を抜け、未開惑星へと着陸する。
着陸地点は辺境の森の中だ。全く未開惑星はめんどくさいったらありゃしねえ。
「さあ。嬢ちゃん。着いたぜ。お前さんの星によお」
俺は自身の座席のシートベルトを外すと、ウサギ耳少女のシートベルトも外す。
「ありがとうございました……あの。お名前聞いてもいいですか……」
おおっと。俺としたことが、レディにこれまで名乗ってなかったな。いくら少女とは言えこれはいけてない。
「俺は健太郎ってんだ。名乗るのが遅くなってすまないな」
「私はラティアです。私の星へ連れて来てくれてありがとうございます」
ウサギ耳の少女――ラティアはペコリとお辞儀をする。いいってことよ。
「嬢ちゃん。お前さんの住んでいた街まで送ってくぜ」
「え? ここは何処なんですか?」
「先に準備をするから、少し待っててくれ」
俺はラティアにそう言い残すと、船内の武器庫へと向かう。まずは着替えだ。俺は装甲繊維で織られたカーキ色の作業着に着替え、ホルスターに入ったレーザー式44マグナムを二丁腰に取り付ける。
背中には超振動ハンドアックスを携えると準備完了だ。
宇宙船のハッチを開けてラティアと共に大地に降り立つ。
――見渡す限りの大自然だぜ! なんというかサイズが違う。大木が連なるこの原生林は圧巻だぜえ。なんと木の一本一本がおおよそ高さ三十メートル。幹の太さもそれに比例して分厚いったらなんの。
「ここは……ひょっとして……」
辺りを見渡したラティアの顔が急に青ざめ、ウサギ耳もペタンと頭に張り付いているじゃないか。
「ラティア! しゃがめ!」
俺の叫び声に驚いたのか一瞬ビクッと肩を震わせるラティアだったが、俺の言う通りそのまま地面にしゃがみ込む。
そこへ俺は自慢のレーザー式44マグナムを抜き放ち、トリガーを引く!
――俺の放ったレーザーが一メートルほどの黒い何かに見事ヒットする!
これは……蜘蛛か? 中央を俺のレーザーで射抜かれプスプスと煙をあげる死骸は、黒い体毛が生えたまだら模様の巨大な蜘蛛だった。足を除いた体長が一メートルもありやがる!
こいつは蜘蛛の糸を伝って飛び込んで来たんだろう。全くふてえ野郎だぜ。
――木々がざわめきだす。
こいつは風とかじゃあねえ。こいつは――
――前方の木々の枝という枝に先ほど仕留めたのと同じ黒い体毛が生えたまだら模様の蜘蛛!
「ラティア。船に戻っておけ!」
「健太郎は……?」
「俺か、俺は俺達を襲って来ようとしているふてえ野郎どもを始末してやるのさ」
ラティアは納得いかない様子だったが、俺が彼女の尻を軽く撫でたら怒った様子で船のハッチへと戻って行く。
船のハッチが閉じたことを確認した俺は前方へと振り返る。蜘蛛たちは先ほどの俺の攻撃を警戒してか、まだ近寄ってこない。
「ヘーイ! そっちが来ねえなら、こっちから行くぜえ!」
俺は蜘蛛たちへ向けて駆け出す!
数歩進んだ時、蜘蛛たちはキーキー鳴いたかと思うと、口から糸を吐き出してきやがった。俺は上体を逸らし蜘蛛の糸を躱しながらも足を止めず、レーザー式44マグナムを二丁とも取り出し構える。
「そんなんじゃあ当たらねえぜ。飛び道具ってのはなあ、心穏やかに撃つもんなんだぜ」
俺は両手に握ったマグナムのトリガーを同時に引き、二匹の蜘蛛へ向けてレーザーを発射する。見事レーザーは蜘蛛の胴体を貫き、まずは二匹。
蜘蛛たちは一斉に俺目がけて白い糸を吐き出してくるが、同じところを狙っていたらダメだぜえ。俺は華麗に飛び上がって糸を回避し、空中で一回転しながらマグナムのトリガーを引く。
更に二匹を撃ち落とし、俺は大地へと着地する。着地と同時に蜘蛛の糸が飛んでくるが、俺はマグナムを大地に打ち付け側転しそれを交わす。
ヘーイ! そんなんじゃ当たらねえって言ってるだろお。俺は心の中で独白し、両手のレーザー式44マグナムを三連射する。さらに木から地面に落下する蜘蛛たち。
すると、蜘蛛たちはあきらめたのか、糸で俺を攻撃するのを辞めて奥へと引っ込んでいく。
いや。これはあきらめたんじゃねえな……ほら、おいでなすった!
――全長十五メートルはあるであろう巨大な蜘蛛が赤い目を光らせて木の枝の上から俺を睨んでいるじゃねえか。足まで入れると二十メートルはあるなこいつ。巨大蜘蛛は一メートルの蜘蛛と違って体毛は黒一色で、赤く光る眼が四つある。
まあ、そんなこと俺には関係ねえがなあ!
俺は巨木にぶら下がる巨大蜘蛛を睨むと口笛を吹く。クライマックスほど冷静にってな!
巨大蜘蛛は他の蜘蛛たちと同じように白い糸を吐き出してくるが、サイズが違う! さすがにでかいだけのことはあるぜえ。糸の太さだけでも三十センチはあるんじゃないだろうか。
俺は吐き出された蜘蛛の糸へ向けてレーザーを発射すると、巨大蜘蛛の糸は途中で焼ききれその勢いを止める。
「まだやんのかあ? いい加減あきらめたらどうなんだ?」
俺は巨大蜘蛛に向けて言い放つが、もちろん巨大蜘蛛が俺の言葉を理解するはずもねえ。耳が痛くなるほど大きくキイキイ鳴きやがる。
巨大蜘蛛は糸を吐き出してくるが、俺はことごとくレーザーでそれを焼き切る。巨大蜘蛛は一匹かもしれねえが、一メートルの蜘蛛は大量にいやがるから巨大蜘蛛に俺を襲うのをあきらめてもらおうと思っていたが、
仕方ねえ。
俺はレーザー式44マグナムを二丁並列させて構えると、トリガーを引く。狙うは……
――その赤い目玉だ!
引っ付いた二本のレーザーが巨大蜘蛛の赤い目を見事に射抜き、巨大蜘蛛はこれまでにない大きさでキイキイ叫び声をあげた。巨大蜘蛛は目玉が四つあるからまだ三つ残ってんだけどな。
目を撃ち抜かれた巨大蜘蛛はやっと諦めて他の蜘蛛と共に森の奥へと消えて行った……全く手間かけさせやがって。よおし、船に一度戻るか。
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