ラブドール

「はぁ〜るぅ〜ひぃ〜」


甘ったるい香水を付けた今のカノジョに名前を呼ばれた。

やけにベタベタしてくるカノジョをうっとおしいと感じながらも振り払うことはしない。

「どうしたの、ユイ」

化粧をして一般以上に可愛いカノジョを歩きながらチラチラ見ているサラリーマンのオッサンなんかを見物するのは結構楽しい。


「今日はアレ、してくれるの?」


舌なめずりの聞こえてくるような声で言ったカノジョに俺は飽きれながらもカノジョの望んでいる答えを出す。


「じゃぁ、行く?」


歩道の反対側に冴羽が男といるのが見えたが、見えてないフリをした。


フリをしないと崩れてしまいそうだから。


ふわふわ浮く冴羽を捕まえきれない待ち遠しさに


冴羽をぐちゃぐちゃに壊しそうだから


だから、なにも見なかったことに



するんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る