恋愛マニュアル

冴羽霞が好きだと気づいたのは冴羽と会ってちょうど1ヵ月が経った頃だった。

冴羽は自分大好きな痛い奴だが、優しい性格をしている。

─自分は愛される側の人間。


物心ついた時にはそれは分かっていて、それが当たり前だと思っていた。

冴羽に会うまでは───


「あなたの隣、空いてる?」


選択授業の席で一つだけ空いていた俺の隣に冴羽が座った。

特にやることの無さそうな美術を選んでたから周りに男友達もいなく、別に断る理由も無かったので軽く会釈をし、昼寝をしようとした時─


「あなた、愛される側なのね」

冴羽は小声で呟いた。

俺に向かって言ったのか、それとも只の独り言だったのかは分からない。

ただ俺のことをそんな風に言う奴がいることに親近感を覚えたのは確かだった。


たった一言で俺は、冴羽を気になり出し、好きになった。


それからも選択授業の時間などで話すことがあり、冴羽のことがよく分かってきだした。


冴羽は俺に告白されたら付き合うだろう。


だけどそれは本当の愛ではなく、冴羽が愛す側の人間だからであって俺の欲しい冴羽は貰えない。



だから、俺は誰とでも付き合う。

告白をされれば付き合う。


愛を貰わなければ死んでしまうかもしれないから。


最近気づけたのは、愛を貰うことが幸せだということ。


当たり前では、無いんだ。


必要のない愛は貰えても、欲しい愛は貰えない。


苦しい。


苦しいからまた必要の無い愛で誤魔化す。




あぁ、俺は今日も愛される

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