運命

「冴羽さん」

振り返ると優しそうな顔をしたクラス委員長田中くんがいた。

「どうしたの?田中くん」

にっこりと、私の可愛らしい顔を微笑ませ聞くと田中くんは頬を赤らめ、

「今度、一緒に映画見ませんか?」

と言ってきた。


──これは一般にいうデートというやつだ。


田中くんは8割がた私のことを好きだと思う。

前から田中くんは私を五分に一回は私を見てるし、朝はおはようを欠かさない。

田中くんのことは普通に好きだから、もし告白されたら付き合おうとも思ってる。

まあ、告白されたら誰でも付き合っちゃうんだけどね。

「いつ見にいきますか?」

私がそう言うと嬉しそうに顔を輝かせ田中くんは早口でしゃべり出した。

「行ってくれるんですか!?じゃ、じゃあ今週の土曜に!」

あらかじめ持ってたのか、私に映画館の名前を書いたメモ用紙を渡した。

「じゃあ、また土曜に」

「はい!」

ひらひらと手を振り、田中くんが去るのを待つ。


田中くんの姿が見えなくなった頃、また声を掛けられた。

──罪な女…

「おいブス」

「失礼ね。この可愛い2重に白い肌。少し高めの鼻にキュートな唇をした私に誰がそんな汚い言葉を放てるのかしら。」

秒速の速さで振り向くとそこには学年一モテると言われている一軸晴日がいた。

「お前、それ俺じゃ無かったら引いてるぞ…」

晴日はいつもの無表情でそう言うと近くの壁に寄りかかった。

「あら、じゃあ私は運まであるのね」

「どこまでも尊敬するよ」



─晴日は、愛される。

愛されるから、愛すことを知らない。

1人で突き進む姿は本当に綺麗。


だから、好き。

友達として、

恋愛感情として。


けど、愛すことを知らない人だから、私がどれだけ愛しても愛をくれることは無いの。

別に愛を求めてる訳じゃないから良いんだけど、少しだけ晴日から愛を貰いたいって思う。

これは多分、私も初めてだから絶対とは言えないけど私が本気で晴日を好きになったからだと感じるわ。

晴日は告白したら付き合ってくれる。

けど私はそんな愛が欲しい訳じゃないから。

だから晴日には絶対、告白しないの。

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