フリーダム

@sera

4月

「お前キャラ違くない?」

「うーん、いつの間にかこんな事になってたー」

「なんだよ、それ。どう考えても普通に入学してすぐ流れでそんな事にはならないだろ」

「まぁ入ってみたら意外と楽しいよ」

「だからキャラ違いだろ、お前がダンスサークルなんて!」

私、吉川隆太は、これまで小中高とずっと文芸部だった(いや、正確には小学校で6ヶ月サッカークラブ、中学で5ヶ月バスケ部、高校で6ヶ月テニス部だったが)。それが大学入学と同時にダンスサークルである。世間的に見たら大学デビュー、ただ当の本人としてはなんとなく流れでダンスを始める事になっただけで大学デビューしたくてダンスサークル

入ったわけではないので今までと意識は変わっていないし大学デビューと言われるのはなかなか困りものである。

「まぁいつもの通り始めて一年も経たないうちに辞める事になるだろ」

こんな失礼な事を平然と言ってのけるのは、小学校からの知り合い(所謂腐れ縁というやつ)の山崎である。ちなみに山崎は小学校の頃からずっと野球一筋で大学でも体育會野球部に入る予定のいかした(イカれた)野球バカである。

「うーん?なんか今回は続けられそうな気がする。体育会系っぽくないし、むしろ今までいた文芸部の人間っぽい人達が多いし」

「はいはい、大学デビューしてモテたいって事は分かったよ。せいぜい頑張りたまえ。」

「うん、せいぜい頑張ってみるよ」

こんなゆるりとした会話からスタートした私の大学生活。まさかあんなに青春を感じることになるとはこの時は思っていなかった。

4月のサークルはずっと体験練習という名目だったのでストレッチから基礎的な事をゆっくり教えてもらって、運動オンチの私でも苦もなくついていく事が出来た。最後にほんの少しだけ踊るのは自分を客観視してしまい、自分のキャラと違い過ぎて照れてしまうけれど、優しく穏やかな先輩達に囲まれてそれなりに楽しくやっていた。5月に入ると所謂体験練習は終わり、少し本格的な練習も始まったが、なんとなくついていけている気持ちになれたし、コミュ障の私でもようやく周りの人達と雑談を交わせるようになってきてサークルを続けられそうと自信をつけてきていた。

そんな日々を過ごしていると突然サークルの代表の先輩が

「今年も9月に公演をやります。そろそろ募集要綱を配れると思うので、1年生のみんなも積極的に参加して下さいね。その前には夏合宿もありますし、盛り上がっていきましょう!」

「あー、もうそんな時期かー」

「去年は2曲で物足りなかったから今年は3曲以上出よー」

俄に周りがざわざわし始める。慌てて同期を見ると皆一様にきょとんとしている。良かった何も知らないのは私だけじゃなかった‥。

「先輩公演ってなんですか?」

同期のリーダー格が素早く質問を展開する。

「まぁおいおい説明していくけど、うちのサークルは毎年9月に公演をやってるんだ。OBOGの先輩方も出演されるから出演者は総勢100名くらいの規模になると思う。これは凄いことなんだぞ。一年生のみんなは今のうちに先輩達から話聞いておいても良いかもな!まぁ近くなったらまた説明します。今日はこれにて解散!」

「はーい」

なんだか浮足立つ空気の中、いつもとちょっと違うサークルが終了した。

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