第41話 狙われた久万秋進士
柔道大会当日は、朝からあいにくの雨だった。
午前九時。参加選手たちはすでに会場入りしていたが、各高校の応援団の姿はまばらであった。この時間、武道館に足を運ぶ人は、決まって恨めし気に空を見上げては傘を閉じた。
そんな中、正門前でタクシーが急停車した。降りてきたのは、沢渕晶也と堀元直貴だった。
「何とか間に合ったようだね」
「はい」
昨夜、大きな踏切事故が発生したとかで、始発からダイヤが乱れていた。おかげで二人とも予定が大幅に狂ってしまった。そこで連絡を取り合って、駅からタクシーを飛ばしてここまでやって来たという訳である。
一時はどうなることかと、沢渕は肝を冷やした。クマの勇姿を見逃したとなれば、彼は荒れ狂うに決まっている。この先ずっとその話を蒸し返されてはたまったものではない。沢渕は胸を撫で下ろした。
ふと、視界に派手な服装が飛び込んできた。柔道という日本武道の荘厳さを意に介さない色彩。しかも雨もやのせいで、まるで水墨画を思わせる風景の中、それは一際異彩を放っていた。一体何が始まったのか、それを考えるより早く、その人物は二人の前に立ちはだかっていた。
橘
黄色のシャツと白いミニスカート。胸には「山神高校」という英文字があしらわれ、両手には金色のポンポンがまるで生き物のように動いている。まさしくチアリーダーの衣装だった。
男二人に言葉はなかった。互いに顔を見合わせるので精一杯だった。
「二人とも、遅刻よ」
雅美はポンポンを二人の顔面すれすれで揺らした。
直貴は咳き込んでから、
「その格好は一体、どうしたんだい?」
と声を詰まらせた。
沢渕はつま先から頭のてっぺんまで、彼女の全身に視線を這わした。ポニーテールで、しかも手足の長い彼女は、この日のために生まれてきたのではないかと思わせるほど似合っていた。
「チアリーディング部の子に借りたのよ」
「いや、そうじゃなくて。今日は柔道の試合を応援しに来たんだろう?」
「えっ、何か問題でも?」
雅美は訳が分からないといった顔である。そして助けを求めるように、
「沢渕クン、私って魅力ないかしら?」
と訊いた。
見る見るうちに肩が下がって、表情が曇った。
「いえいえ、とっても似合ってます」
沢渕は慌てて言った。
雅美の顔がパッと明るくなった。またポンポンを揺らした。
「ほら、沢渕クンは理解してくれているじゃない」
「他にもチアの人は応援に来てるのですか?」
沢渕が念のため訊くと、
「この後、二人来る予定よ」
と平然と答えた。
「その二人って、まさか?」
直貴が恐る恐る言った。沢渕も覚悟を決めた。
「もちろん、奈帆子さんと多喜子さん」
予想はやはり当たってしまった。
「ということは、佐々峰姉妹の衣装も用意してあるんだよね?」
「当たり前じゃない。三人分借りたんだもの」
「佐々峰姉妹はまだ来てないのかい?」
先に衝撃から立ち直った直貴が訊く。
「それがまだなの。私一人にこんな格好させて、どういうつもりかしら」
あの姉妹は、果たしてチアの衣装を着てくれるだろうか。いや、その後会場での応援も待っている。ハードルは極めて高い。ひょっとして、これが嫌で来るのを止めたということはないだろうか、沢渕は真剣に考えた。
三人は会場に入ることにした。
雅美の派手な格好は係員に制止されるのではないか、むしろ制止してほしいと、心のどこかで叫んでいたのだが、その願いは届かなかった。係員は物珍しそうな顔をしてはいたものの、口を開けたまま何も言ってはくれなかった。
応援は二階席からである。まもなく予選が始まるというのに、意外と人は少なかった。やはり鉄道ダイヤの大幅な乱れが影響しているのかもしれない。
武道館の中央を見下ろすと、畳が整然と敷かれ、柔道着たちが受け身を取ったり、身体をほぐしたりと最後の調整に余念がなかった。
「あっ、クマゴロウだわ」
雅美は今日の主役を素早く見つけると、ポンポンを高く振って、
「ヤッホー」
と声を出した。
柔道着が一人慌てて駆け寄ってきた。大柄な身体は途中、二度三度転けそうになった。その動きは実にコミカルであった。
「お、おい、橘。あんまり目立つ行動は慎しめよ」
応援席の真下で仁王立ちになったクマは、周りを気にしながら言った。
「何よ、せっかく応援しに来たのに」
「いや、だからひっそり応援しろっての」
「それじゃあ、応援にならないじゃない」
雅美の不満気な声が会場に響く。
「とにかく、お前は目立ち過ぎなんだよ」
確かに今やチアガールは選手、審判、観客全ての目を、一斉に惹きつけているようであった。
「何だか、応援する気が失せていくわね、まったく」
雅美はポンポンを放り出した。
「おい、晶也、他の連中はどうした?」
クマが訊いた。
「あとは、佐々峰さんたちが来る予定です」
「しっかし遅いな。もう始まっちまうぜ」
森崎叶美は家庭の用事で来られないことは、クマも先刻承知している。他のメンバーは知らされていないが、祖父の喫茶店の店番があるということだった。
「クマ先輩の出番はいつですか?」
「俺は最後だ。ちゃんと見ててくれよ」
「私がついてるからね、絶対負けないでよ」
雅美が言った。
「ついでにこいつも見張っててくれ」
クマは雅美を指さした。
「何ですって!」
試合前という、緊張感漂う雰囲気の中にあっても、二人はいつもの二人であった。
沢渕は一度席を離れて、多喜子に連絡を取ってみた。しかし電源が入っていないというメッセージが流れるだけだった。念のため、姉、奈帆子の方にも掛けてみたが、やはり同じであった。普段一緒に生活をしている姉妹二人が、共に電源を切っているというのはどんな状況なのだろうか、沢渕は少々不審に思った。
予選が始まった。
山神高校は順調に勝ち続けた。三番手が一敗を期したが、それでも他の選手は圧倒的な力で相手をねじ伏せていく。
「あっ、いよいよ出番ね」
雅美は立ち上がって、
「クマゴロウ、頑張って!」
と、小躍りしながら黄色い声で叫んだ。
クマは恨めしそうにこちらを睨んだが、それでも襟を正すと、中央に歩み出た。
「一本!」
試合開始数秒で決着がついた。会場からはどよめきが起こった。
「凄いわ」
雅美は応援も忘れて感心しきりだった。
クマの活躍もあって、山神高校が決勝戦に駒を進めた。柔道部員たちが一斉に頭を下げると、会場は惜しげもない拍手に包まれた。
「クマゴロウって、やっぱり強いのね。ちょっとだけ見直したわ」
雅美が興奮気味に言った。
山神高校の柔道部員たちは控室へと消えていった。
休憩時間である。会場には喧騒が戻ってきた。
沢渕は直貴の横で、小声で話し始めた。どうしても話題は事件のことになる。
「例の佐伯病院はどうでしたか? 何か分かりましたか?」
「調べてみたよ。君の睨んだ通り、古い病院だった。戦前からあの場所で開業していたみたいだ」
雅美も病院に潜入した一人である。隣で耳をそば立てていた。
「戦後、増築を二回しているようだ」
「中を見た限り、人質を監禁できるような場所は見当たりませんでした」
それには黄色のチアも頷いて、
「隠し部屋でもあるのかしら?」
「そうですね。考えられるのは屋上か地下ですが、昔の建物は戦火を逃れるために、地下室をよく利用していたと聞いています」
「そうよね。地下室なら見つけ難いわ」
沢渕の顔にポンポンが接触した。
「それに妙な噂があるんだ」
直貴が声を落として言った。沢渕とチアが身を乗り出す。
「あの付近で、人が失踪する事件が何度か起きているんだ」
「そうなんですか?」
「被害者数は少ないから、今回のように大袈裟には扱われていないのだけど、警察は家出か事件か決められなかったケースがある」
「なるほど。ではあの病院は以前から、人を誘拐して、新薬を投与するという実験を繰り返していたのかもしれませんね」
「でも、今回は誘拐した人数が多いわよ」
またポンポンが沢渕の頬をかすめた。
「これまでの誘拐が成功しているので、徐々に大胆になってきたのかもしれません」
「あと、これは事件に関係ないかもしれんが、あの付近では夜中に夢遊病者がうめき声や奇声を発して歩いているのが目撃されているんだ」
「何、それ怖い」
また、ポンポン攻撃。
「しかし、人質が自由に外を歩ける筈がないから、事件とは関係ないかもしれない」
直貴は慎重に言った。
「いや、むしろ逆かも知れませんよ」
沢渕の目が光った。
「夜中、監禁していた被験者のうめき声が近所に聞かれたため、夢遊病者を装って、その噂を収束させようとしたのかもしれません」
「つまり、夢遊病者は佐伯病院のでっち上げってことかい?」
「ええ、そうなりますね」
沢渕がそう言うと、会場内には爽やかなチャイムが鳴り響いた。
「おや、もうすぐ決勝戦が始めるようだ」
「さあ、またクマゴロウを応援しなきゃ」
雅美が中央付近に目を戻すと、
「あら?」
と素っ頓狂な声を上げた。
「どうかしたのかい?」
「クマがいないのよ」
沢渕も目を遣ると、確かに山神高校の柔道部員たちは、すでに一列に並んでいたが、クマの姿だけがなかった。部員たちも心配そうに辺りを見回している。
沢渕はこの時、何か心にざわめきを感じた。虫の知らせと言ってもよい。思わず後ろを振り返った。誰かに見張られている感じがしたからだった。
しかし何も異変はなかった。
その時である。
背後の廊下で女性の悲鳴が響き渡った。続いて職員が慌てて駆けていく足音がした。
「しまった!」
沢渕は突然立ち上がると、
「先輩たちは、ここを動かないでください」
と早口に言った。
直貴も雅美もぽかんと口を開けている。
沢渕は構わずに、
「至急、佐々峰姉妹と森崎先輩、それから鍵谷先生に連絡を取ってください」
と、二人に指示をした。
「連絡なんか取ってどうするの?」
雅美ののんびりした声に軽い苛立ちを覚えながら、
「とにかく、早く所在確認を」
と言い残して、廊下へと走り出した。
廊下は騒然としていた。逃げ惑う人々、慌ただしく駆けつける職員、そして野次馬で溢れかえっている。特にトイレ付近は人垣ができていた。おかげで、沢渕はすぐに現場を特定することができた。
野次馬をかき分けるようにして進む。途中腕章をした係員に制止された。
「関係者です。通して下さい!」
と大声で突破した。
男子トイレだった。
洗面台の脇に、巨大な柔道着が横たわっていた。ここでも沢渕は係員の両手をすり抜けて駆け寄った。
紛れもなく、久万秋進士だった。
「クマ先輩!」
係員たちの腕が沢渕の身体を羽交い締めにした。
「君、下がって!」
「彼は僕の親友です。放してください!」
そんな大声に気圧されたのか、係員たちは沢渕を解放した。
「早く救急車を!」
そんな指示に、一人が駆け出していった。
「クマ先輩」
沢渕はあえて身体には触れず、耳元で呼び掛けた。しかしまるで反応がない。
後頭部には血が滲んでいた。柔道着の襟元が瞬く間に赤く浸食されていく。柔道着からはだけた腹部は大きく上下に動いている。息はあるのだが、意識不明の状態である。頭部に損傷を受けている場合、不用意に身体を動かしてはならない。
頭頂部が腫れ上がっていた。暴漢は後方から不意を突いたに違いない。クマの身長からすると、相手も上背がある人物だと推定できた。
しかし納得のいかない点もある。
おそらくクマは背後から襲われたのであろうが、彼の真正面には鏡が設置されていた。よって後方から現れた不審者には当然気づく筈である。
沢渕は鏡の反対側に目を遣った。個室が整然と並んでいる。今は全て扉は内側に折れて、内部が見通せる。犯人はこの中で待ち伏せていたのだろうか。
それにしても、その時クマは何かに気を取られていたのだ。とすれば、これは二人による犯行ではないだろうか。一人が洗面所でクマに話し掛け、もう一人がその隙に個室から飛び出して犯行に及んだのだ。
トイレ全体を見回してみた。なるほど、少し離れた窓際に、赤い消火器が一つ転がっている。真ん中辺りから不自然な形に折れ曲がっている。恐らくこれが凶器だろう。背後からクマの頭に打ち付けたのだろう。
沢渕はそれだけをすばやく考えて、立ち上がった。
まだやるべきことがある。
犯人はそう遠くへは行っていない筈だ。今なら追跡は十分可能に思われた。
トイレのすぐ外には、幾重にも人垣ができていた。犯人は何食わぬ顔をして、こちらの様子を窺っていることも考えられる。
沢渕はそんな野次馬たちをぐるりと見渡した。そして背の高い男を探した。もし居れば、すぐに見つかる筈である。
残念ながら該当する人物はいなかった。しかしその途中、慌てて目を逸らす人物を捉えた。明らかに沢渕の顔を知っているに違いなかった。小柄な若い女だった。沢渕が一歩近づいたところで、突如反転すると逃げ出した。
「待て!」
沢渕は駆け出した。
犯人グループの中に、一人女がいた。
進藤真矢だ!
沢渕は野次馬に押し戻されながらも、何とか人垣の外へ出ることができた。一目散に女を追う。廊下に二人の慌ただしい靴音が響き渡った。
武道館はそれほど広い施設ではない。自分の足なら追いつくことができる、沢渕はそう確信した。
女は階段を降りて、入口へ向かっている。あと一息で追いつける。
係員が玄関付近を固めていた。それは追う者にとって有利な状況だった。
ところが女は係員の一人に追いすがると、何か一言、二言口にして、たやすく玄関をくぐり抜けた。
沢渕は軽い焦燥を感じながら、後に続いた。
しかし係員は追跡者をすんなりと通してはくれなかった。腕が沢渕の身体に絡みついた。
「待ちたまえ!」
次々と加勢する腕が動きを鈍らせる。ついにはその場で動けなくなった。
「通してくれ、あいつが犯人なんだ!」
沢渕はもがきながら叫んだ。
こうしている間にも、女の姿はどんどん小さくなっていく。
沢渕の身体は、いつの間にか冷たい廊下に押しつけられていた。
「話は事務所で聞こうじゃないか」
妙に冷静な声が降りかかってきた。
事務所で誤解を解くことになった。
どうやら逃げた女は係員に、
「痴漢に追われている、助けてくれ」
と言ったらしい。
咄嗟のことで女の言葉を鵜呑みにして、係員は団結して沢渕を押さえ込んだのである。
沢渕は身体のあちこちに痛みを感じながら、
「あの女は殺人未遂の容疑者だったのですよ」
と悔しそうに言った。
いつしかサイレンが近づいてきた。救急車が玄関前に着けると、久万秋進士は担架で運ばれていった。沢渕も付き添いとして救急車に飛び乗った。
後方の扉が閉められると、再びサイレンを鳴らして車は発進した。
救急隊員の応急処置が続けられる。
「クマ先輩」
沢渕は無反応の彼の手を握った。
隊員の一人が無線で、緊急手術の要請した。
今、クマには人工呼吸器があてがわれた。まだ意識は戻らない。
左に右に揺れる車内で、柔道着を脱がせて他に損傷がないか診断がなされた。沢渕はその様子を横で観察していたが、外傷はないようだった。
犯人は頭部だけに危害を加えたということである。すなわち強い殺意があったということになる。
(他の部員たちは大丈夫だろうか?)
救急病院に着いて、救急車から降りると、沢渕は直貴に電話を掛けた。
「沢渕くん、今どこに居るんだ?」
直貴の緊張した声。
「今、病院に来ています。クマ先輩がやられました」
「さっきの救急車か?」
「はい」
「それで、クマの容体は?」
「消火器で頭部を殴打されてます。出血していて、意識がありません。これから手術に入ります」
直貴は言葉を失っていた。
やや間があって、
「助かるのかい?」
ぽつりとそう言った。
「クマ先輩なら、きっと助かると思います」
沢渕は自分を励ますように、強い調子で答えた。
「ところで、他の部員に連絡はつきましたか?」
「森崎と鍵谷先生は無事だ。だが、佐々峰姉妹はどちらも電話に出ない」
その言葉に何故か底知れぬ恐怖が湧いてきた。
「あっ、ちょっと待って。橘が戻ってきたから」
電話は突如、雅美の声に変わった。
「沢渕くん、驚かないでね。タキちゃんと奈帆子さんが…」
涙混じりの声だった。語尾がよく聞き取れなかった。
「二人がどうしたって?」
沢渕よりも先に、直貴の声が漏れ伝わる。
「踏切事故で死んじゃったのよお」
男二人は二の句が継げなかった。
「先輩、落ち着いてください」
沢渕は雅美にそう呼び掛けた。
「一体、何の話なんだ? もっと分かりやすく言ってくれ」
直貴の怒った声。彼も冷静さを失っているようだ。そのもどかしいやり取りが不安を増大させた。
雅美は嗚咽を漏らして、途切れ途切れに語った。
「今、ロビーのテレビでニュースをやっていたのよ。昨夜、踏切内で車と列車が衝突する事故があったんだって。それで、佐々峰奈帆子、多喜子って二人の名前が画面に出てた」
「そんな馬鹿な!」
「まさか!」
直貴と沢渕の声が重なった。
「列車に押し潰されて、酷く歪んだ車が映ってた」
「橘、しっかりしろ。まだ二人とも亡くなったと決まった訳じゃないだろ」
直貴は叱りつけた。
雅美はさらに声を上ずらせて、
「私、怖くなって、最後まで聞いていられなかったの。でも、死んだに決まっているわ。あんなに激しい事故なんだもの」
「堀元先輩」
沢渕は電話に向かって大声で呼び掛けた。
「先輩たちは佐々峰姉妹の搬送された病院へ行ってください」
「わ、分かった。それで、君はどうする?」
「僕はクマ先輩の傍に居ます」
沢渕は病院の名前を伝えた。
電話を切ると、すぐにまた着信があった。
今度は、森崎叶美だった。
すぐに応答する。
「沢渕くん、私どうすればいいの? 奈帆子さんとタキちゃんが…」
震えた声だった。
「今、僕も知りました。二人の容体は分かりますか?」
「詳しくは分からない。テレビでは意識不明の重体って言ってるけど」
叶美は突然、泣き出した。
「先輩、落ち着いて」
「これが落ち着いていられる訳ないじゃない!」
彼女の怒りが爆発した。
「先輩、今、どこに居るんですか?」
「おじいちゃんの店よ」
「これから、そちらへ迎えに行きます。絶対に一人で店を出ないで」
「でも、私、これから病院へ行かないと」
叶美はパニックに陥っていた。会話がうまく噛み合わない。
「タクシーを飛ばして行きますから、二十分もあれば着きます。いいですか、それまで絶対そこを動かないで」
「沢渕くん、早く来て頂戴。お願いよ」
「分かりました。すぐに行きます」
そう言って電話を切った。すでに病院玄関のタクシー乗り場に着いていた。
果たして叶美の無事な姿を見ることができるだろうか。そんな不安を抱いて、沢渕は車に乗り込んだ。
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