第3話ソクラテスの人々(趣味のない人々)
「お疲れさまでした」スミスは上司や部下が先に帰った後も一人仕事をしていた。この国、ソクラテスは知的労働を主にした国である。知的労働にもさまざまである。主に法律の整備、製品の開発、建築の設計、医師、科学者など様々である。スミスはその中でメーカーの開発をしているが、ここ最近アイデアでず、そして失敗続きで上司からの厳しい声が多かった。
「・・・・・このままだと左遷かな」スミスは仕事をしながらそんなことを考えていた。もともと頭はそんなによくないと自分でも自覚していた。だが、この国では頭がよくないと仕事がもらえない。そして年収も出世も家庭もすべて頭脳労働である。だからこそ朝食も昼食も夕食も頭にいいものばかり食べていた。ジャンクフードなどスミスは食べたこともないし、そのようなものはこの国ソクラテスにはなかった。
スミスたちソクラテスの人たちはずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと勉強ばかりしてきた。そのためにソクラテスの国にはテレビもないしパチンコ店もないし、ゲームセンターもないし、ましてや風俗店もない。あるのは本屋とホテル、病院、研究センターしかなかった。本屋に関しては娯楽本もなく難しい専門書だけであった。
だが、彼らにも利点があった。それは年収がほかの3つの国と比べて2倍近くあったことである。それをスミス達ソクラテスの住民はもらっているが、彼らには遊びの概念がないために貯金という数字だけが増えていった。
スミスは深夜まで残業して帰るころにはもう終電だった。電車に乗るといつも通り満員電車だった。ソクラテスの住民にとって終電に帰るのはあたり前であった。電車から降りるとそこにはあたり一面がマンションだらけの外であった。ソクラテスの住民は一軒家というものがそもそもない。そしてこのように会社や機関以外のところの町はすべてマンションだけの街だった。スミスの住んでいるマンションもその中にある。彼の高層マンションは23という数字がマンションの前に書かれている。彼はいつものようにその番号を見つけ、マンションに着いたら郵便物のチェックをし、そして入口のロックを外して中に入った。
「お疲れーーーー」スミスが家に帰るとそこにケインズがいた。二人は兄弟であり一緒の会社で働いていた。もともと兄のスミスがフリーターのケインズを会社に推薦したのである。だが1年ケインズは会社を辞めてスマートフォンアプリの開発で独立した。最初のほうは順調に言っていたスマートフォンアプリだったが、その勢いは最初のブルーオーシャンだけであった。現在は様々な大手企業がスマートフォンアプリにさんにゅうし、ケインズの会社のアプリはいとも簡単にアプリランキングの圏外にいった。スミスはそれを知っていた。だからこそケインズをまた何とか社会に復帰させたいと考えていたが、ケインズの意思を尊重させたかった。
「仕事はどうだ?」
「まあまあかな」
「・・・・・・・・・そうか」スミスはそれ以上聞かなかった
「ごめん、そろそろまた会社に行くわ」
「わかった」そう言ってケインズは深夜にまた外に出ていった。
私はシャワー浴びてご飯を軽く食べた後、また明日の仕事の準備をしていた。スミスの日常はこのような毎日を送っていた。彼らとサイハテンの国の違いがあるのは彼らには休みが週に2日あることだった。だが、彼らからしたらそんなものは必要なのかどうかわからなかった。この国で楽しいことなど今までなかったのだから。
スミスは専門書を漫画代わりに読みながら昔マイトクラスからできた人気キャラクターを片手で抱いていた。あの時の上司の機嫌の悪さはいまだに忘れられなかった。
『お前らいいかげんしとけよタコ!!!!なんで娯楽みたいなくずやろーどもに俺らソクラテスの知的労働者が利益で負けねえといけねえんだよ』上司は頭から湯気が出るほどの怒りをだしていた。社長はまだ温厚な人なのでそのときは『そんなときもある』と周囲にいっていたが、上司だけはプライドが許せなかったのだろう。彼はソクラテス中からそのキャラクターのゆいぐるみを集め、オフィスの前でありとあらゆる手を使って破りめちゃくちゃにしたのである。あるキャラクターは燃やし、あるキャラクターはナイフで引き裂き、あるキャラクターは手で強引に破り、あるキャラクターはなんと上司が自分でオナニーをした後にその汁をゆいぐるみにかけたのである。
『いやああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』と女性職員は上司の行動に恐怖を感じていた。だが、上司はそれを辞めなかった。そして1週間程度たってやっとその行為は終わった。しかし社員の何名かは辞めていったが。
わたしからしたらどうでもよいことであるが、そこまでこの国は賢いのか?と思いたくなる。そもそも知能とは何なのか?外国語を話せることなのか?計算が得意なことなのか?ひらめきなのか?考えが理論的なのか?設計がうまいのか?それともIQの違いのなのか?このことを毎日考察していても私にはまだわからない。
もう寝よう。私はベットに行って寝ることにした。まだケインズは帰ってこなかった。
ピンポーン。私は朝のチャイムで目を覚ました。
「はあーーーーーーい」私はドアを開けるとそこに警察官が二人たっていた。
「スミスさんでよろしいでしょうか?」
「はい、そうですが」警察官二人は何か資料を確認しながら私の顔を覗き込んでいた。
「スミス・ミストさん。あなたの弟であるケインズ・ミストさんが昨日殺人事件を犯し逮捕されました」
私には二人の警察官が何を言っているのかがわからなかった。ケインズが殺人?なぜ?
「それは、何かの、間違い、では?だって、弟はそんな、こと、する、人間、なんて?」私は事の出来事にいまだに対応できなかった。
「お察しします。ですが本当のことです」そう言って彼らは弟の逮捕の詳細と殺された人物を私に言った。その時点で私はショックで倒れてしまった。
「目が覚めましたか?」私が目を覚ましたのは私のマンションから少し離れた病院だった。
「ええ、すぐに担当の先生を呼びますね」そう言って看護師さんは先生を呼びに行った。
私はそれから先生に倒れた原因などを聞くと過労だった。ここ最近相当根を詰めていたらしい。だが、普通ならそんなことで倒れなかった。そう、張りつめていた糸が切れてしまったのである。
「すいませんが、朝の新聞をもらえますか?」私は看護師さんにいって、新聞を見せてもらった。新聞には弟、ケインズ・ミストが強盗殺人を犯したニュース一色だった。
ソクラテスにも王様はいた。王様の名前はロック。ロックは大臣と二人で夜に食事をとっていた。
「ロック様、今日の新聞は見ましたか?」大臣はロックに今日の新聞をわたした。
「殺人事件か。何年ぶりだ。うちの国で殺人事件があったのは?」
「さあ、少なくとも何十年も前になりますね」そう言って大臣はメインのお肉を口にほおばった。
「まあこれで今回の利益は何とかなりそうだな」そう言ってロックはワインを一気に飲んだ。その表情はどこかうれしそうであった。
「しかし、事件というのは重なるものなんですね。隣のサイハテンでも何十年ぶりに殺人事件があったらしいですよ」
「サイハテンがね。あそこのやつらは野蛮人だからな。俺からしたら毎日でもしてそうな勢いだがな」
「・・・・・ですね」ロックはこの国、ソクラテスがヘブンキングダムの次にランクが高いと信じている。それはこの国民たちの大半一緒である。だが、大臣は府に落ちなかった。所詮家畜は家畜。ヘブンキングダムの前ではすべて同じなのではないのか?
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