正夢ファンタジア
@poti_og
真矢 夢の出会い
信じられない光景が広がっていた。
街並みや舗装された道路は崩壊し、人の姿はまるでない。まるで楽しむかのように街を破壊する人らしき者達が、蹂躙しながら練り歩いている。
けれど自分は不思議とそれに慣れていて、仲間らしい人と様々な手を持ってそいつらを倒している。
何が起こっているかわからない、まるで意識と体が分断されたのかと思う。
そして、そんな中で見覚えのない、だけどすごく暖かさを感じる青髪の女の子が俺に言った。
「ねぇ…私がリーダーでよかったのかな…」
何の団体のリーダーなのか、そもそもこの世界は何なのか、色々な疑問が浮かんだ。でも俺は迷わずに口を開いていた。
「うん、お前がリーダーで本当によかった」
その時始めて気がついた、とびっきりの笑顔でこちらを向いている女の子に見覚えがないのも当然だった。
だってこれは―――
「ありがとう」
「夢……だったのか……」
自分はいつも大体同じ時間に目が覚める、しかし時計を見るとそれを2時間近く回っている。よほど疲れていたのか、先程まで見ていた夢がくっきりと脳裏に焼き付いている。
ひとまず朝食を取ろうとキッチンに行くと、親からの置き手紙があった。
真矢へ、すごくうなされていたので、一応学校へ連絡を入れておきました。もし体調が悪いようなら学校は休んで構いません、朝食は冷蔵庫に入っています。
「うなされてた…か」
少ししまったと思いつつ冷蔵庫から朝食のフルーツを取り出す。程よく冷えた果肉を食べながら、頭の中にこびりつく夢のことを考える。
「青髪の…女の子……」
本棚にある中学校の卒業アルバムを見てみる。親しい人間なら夢に出てきてもおかしくはない。埃のかぶったアルバムをめくっていく。
似通った顔はどこにもない。
次にテレビをつけてニュースを見る、有名人の顔なら覚えているし夢に出てくるかもしれない。
今度も似た顔はなかった。
試行錯誤する中で1つ当然のことに気づく、そもそも知り合いに青髪はいない。俺は生粋の日本人だし親戚や友達にも外国人はいない、そもそも青髪という条件からおかしいのだ。
「そうだ、常識離れしていた」
合点がいった勢いで声に出てしまう。合点がいったはいいが進展したわけでもない、どうにももやもやして考えがまとまらない。一旦食事を置き外に出る、澄んだ空気が思考を落ち着かせる。
ふとポストが目に入る、少し目を凝らすと1枚の手紙らしきものが入っているのが分かった。気になって手に取って見てみるが、差出人も宛名もない。
なぜそう思ったのかは分からないが、何か手がかりがあるような気がして封を切る。間違いなのではないか、開けてはいけないものなのではないか、そんな余念は一切なく、ただ夢の彼女を求める一心で中を見る。
中には3つ折の紙が1枚入っていた。開くとそこには大きく文字が書かれている。
「庇護欲」
庇護欲、と言われた気がして少しドキリとする。昔からよく、お前は庇護欲が強すぎると言われる。だがそれとこの紙に何の関係があるのだろう。考えるが答えを見いだせない。
考えれば考えるほど、なぜか睡魔が襲ってくる、ねっとりと這い寄ってくるような眠気だ。抗うこともできずそのまま意識を手放す。体が地面に伏せる、ひんやりとしたコンクリートの感触に触れながら、深い眠りに落ちていった。
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