六月十二日(月)曇りのち晴れ☂
今日、早めに部室に行ったら、
暇だったからボーッとしていたら、
空良先輩の撮った写真。
もちろん、この部活に入部してから、去年のあの、「茜空の少女」までの作品だけど。
最初の数枚を見ていたところで、空良先輩が部室に入ってきた。
空良先輩は、すごく苦しそうな表情で、その写真を見た。
胸が、刺されたような、とにかく痛かった。
空良先輩が部室に入ってきたことに気づいた梓先輩は、慌てて写真を片付けて。
ごめんって謝ってた。
そしたら、空良先輩も、ごめんって。
もう、写真は見れるよ、とも言っていた。
梓先輩は、首を横に振って、写真をしまった。
どうやら空良先輩は、「茜空の少女」の写真を撮って以来、写真を撮ることだけじゃなくて、自分が撮った写真を見返すこともできなくなってしまっていたらしい。
だけど、部の規則で一人一作品以上の提出が義務付けられている文化祭で、締め切りが迫ってやっと、写真を見ることができたそうな。
……見れた、というよりも、見ざるを得なかったんだろうな。
普段は優しくて、文化祭に出展しなくてもなにも言わなかったくらい甘い顧問が、今回は、出せない、という空良先輩の言葉に、首を決して縦に振らなかったらしい。
新しく写真を撮ることができなかった空良先輩は、過去の作品を見返すことになり、そのおかげで一応、見ることはできるようになったみたい。
……きっと顧問が首を縦に振らなかったのは、空良先輩が写真から離れてしまうのを止めるためだったんだと思う。
空良先輩の写真は、本当に綺麗で。
写真とかカメラとか、そういうことの知識はまったくないけれど、きっといいカメラで撮れば、もっともっと綺麗だと思う。
やっぱり、いいカメラは高いんだろうなあ……。
今日の「そら」は雨模様。
声をかけても、気づいてもらえないこともあった。
大丈夫かな。
そうそう。
空良先輩の写真は、やっぱりというか、なんというか。
空ばかりで。
そして、その空を背景に、いつも同じ女の子がいた。
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