水晶界のマギアメイル
鰹 あるすとろ
序章
0話:転移 -Transition-
----西暦2058年
―――そこは、とある研究所のとある研究室。
薄暗い正方形の空間。
壁には一面に計測機器やモニターが並び、それらは常に何かを観測している。
部屋の中央には細長い円柱状の形状をした培養槽のような機器が設置されており、周りの機器へとおびただしい量のケーブルが伸びている。
その機器の周りを、数人の研究員らしき者たちが取り囲んでいた。
そしてその、青い液体で満たされた機器の中には、指先をピクリとも動かさない、一人の少年の姿があった。
「……成功した、か」
培養槽の前に立っていた白衣の男が、ぼそりと呟く。
年齢は30代くらいだろうか。過労からか、その顔はひどくやつれていた。
背は高いが全体的に痩せ細っており、その右手には紫色の宝石がはめられた指輪が付けられている。
「すまないなァ、少年」
男は誰かに謝罪の言葉を述べる。
だが、その表情に悔恨の念のようなものは伺えない。
むしろその顔は、達成感に満ちたものだった。
「孤児であった自分を呪って……いや、違うな」
口元から狂気じみた笑みをこぼしながら、男は続ける。
「キミはこれから英雄になるんだ。あの大地に、最初に調査に赴いた偉大な英雄だ!」
周りの研究員たちに狂人扱いされても、陰口を叩かれても、彼は意に介さない。
―――男は狂気を称えた笑みを浮かべながら、ただただ、新たな英雄の誕生を祝い続けていた。
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