第5話 告白というもの

 日曜日、凛はすることもないのでDVDでも見ようとしていた。その時、渚から連絡があった。そして、これから2人で遊ぶ事になった。凛はカツラと眼鏡をして、いつもの地味な格好になり、出掛けた。

待ち合わせ場所に、渚はもう来ていた。

「ごめん。待った?」

「ううん。行こ。」

「どこに?」

「いいから。」

2人がやって来たのはファミレスだった。席に着くとすぐに、渚は話し出した。

「凛って好きな人いる?」

「いないよ。」

「本当に?」

「うん。」

「よかったー。」

「なにが?」

「実はね、私海斗君のこと好きになっちゃった。」

「恵美くん?なんで?」

「実は金曜日の夜学校に残ってレポート書いてたの。そしたら、海斗くんも残ってて、一緒にレポートやってたの。それで、帰り夜遅いからって家まで送ってくれたの。その間ずっとドキドキしてて、あー、好きなんだなーって。ほんとは昨日言いたかったんだけど凛昨日バイトだったんでしょ?」

「うん、バイトだった。そっか、恵美くんかー。頑張って。応援してる。」

「本当に?ありがとう。明日話しかけてみる。」

「なんか、高校生みたい。」

「確かに。まあ、こないだまで高校生だったし。」

「それもそうか。」

3時間くらい話して2人は別れた。凛は帰りにスーパーに寄った。

「凛ちゃん?また会ったね。」

「恵美くん。」

突然の登場に凛は少し焦った。帰り道の方向が同じだったから、2人は一緒に帰る事になった。海斗が凛に聞いた。

「凛ちゃんは好きな子いる?」

本日2回目の質問に凛は驚く。

「いないよ。」

「そっか。」

「恵美くんは?」

「いるよ。」

「へー。」

凛は渚なのか、気になったが自分が出るところじゃないと思い、聞かなかった。だが、海斗は自分から話して来た。

「どんな子か聞かないの?」

「聞かない。聞いてもどうにもならないでしょ。」

「凛ちゃんがよく知ってる人だよ。

そこで凛は思った。‘恵美くんもなぎの事が好きなんだ’と。続けて海斗はこう言った。

「でもさ、その子の好きなタイプが分からなくて困ってるわけよ。」

‘なぎと話の展開が似てる’凛はそう思いながら答えた。

「聞けばいいじゃん。」

「好きってバレる。」

「じゃあいっそのこと告白しなよ。恵美くんに告白されたらきっと喜ぶよ。」

「凛ちゃんも?」

「喜ぶ喜ぶ。」

半分適当に凛は返事をした。すると、突然海斗が立ち止まった。

「恵美くん?どうしたの?」

「好き。」

「は?いや、ちゃんと告白は好きな人の前でしないと。」

「うん。だから、言ってるの。」

海斗が好きな人は凛だった。

「まさか、私?」

「うん。だから、俺と付き合って。」

「何で私?」

「こないだ大学の帰りにお年寄りを手伝っている凛ちゃんを見たんだ。そして、最後に笑顔で笑ったでしょ。その笑顔に惚れちゃった。」

「いや、私顔ほとんど隠れてるし。」

「あの日は強風だったでしょ。」

「そう。あの、恵美くん。私は貴方とは付き合えない。ごめん。」

「だろうね。さっき好きな人いないって言ってたし。」

「そうだったね。」

「でも、俺諦めないから。じゃあ。」

‘困った。なぎの事応援すると言ったのに、これじゃあ邪魔してる。’凛は途方にくれた。次の日になってほしくないと本気で凛は思った。

次の日笑顔で渚が凛に挨拶する。凛も挨拶を返す。凛は正直迷っていた。海斗に告白された事を渚に言おうかどうか。言ったら確実に渚を傷つける。だが、いつかは分かることだ。でも、凛には勇気がなかった。せっかくできた友達を失いたくないと凛は思った。そして、お昼を凛と渚の2人で食べていると、渚が凛にスマホを見せながらキラキラした目で言った。

「見て!オレンジグッドのユキがドラマの撮影ですぐそこに来てるって!次空きコマだし行こうよ!」

オレンジグッドとは、女性の4人組の国民的アイドルグループである。大体の人は知っているだろう。その中でもユキの人気はすごい。だが、凛はあまり興味がなかった。

「えー、きっと人が多くて見れないよ。」

「いいから、行くよ!」

そう言って渚は凛を引っ張って撮影現場へ向かった。

撮影現場は人で溢れかえっていた。でも、渚はその人混みをかき分けるように前に進んで行く。初めは凛も付いて行っていたが、途中で諦め、少し離れたところで待つことにした。少しして突然大歓声があがった。ユキが現れたようだ。そして、撮影が始まった。リハーサルを見る限り、ユキが男性主人公におんぶしてもらうシーンのようだ。そこで、凛はふと、こないだのサングラスの女性を思い出した。‘大丈夫だったかな、彼女。’そんな事を思い出しているうちに本番のスタンバイが出来たようだ。元々背の高い男性主人公におんぶされているので、離れた凛の位置からでもユキが見える。その時、ユキが自分を見てる、と凛は思ったがすぐにありえないと思い直した。その後撮影が終わり、渚が人混みから現れるのを待っている凛にとある女性が話しかけた。

「こんにちは。オレンジグッドのマネージャーの市川夏希です。」

彼女から凛は名刺を受け取る。名刺を見た後、凛が夏希を見ると夏希はこう言った。

「少し来てもらえませんか?」

「はい?」

「ユキが貴方に会いたいと。」

「なぜですか?」

「私にも分かりません。」

「申し訳ないんですが、友達を待ってるので行けません。」

「お願いします。早くしないとユキ本人がこっちまで来る可能性があるので。そうなったらどうなるか。」

凛はユキがここに来る事を想像して、凄いパニックになる事がすぐに浮かんだので、夏希に言った。

「分かりました。」

連れてこられたのはとあるバンだった。凛は騙されているのではないかと少し心配になった。‘そもそも、芸能人が私に会いたいなんて言うはずがない。やっぱり断ろう。’そう思い夏希に言おうとしたがその前にバンのドアが開いた。そして、その中には、ユキ本人がいた。ユキは夏希に言う。

「2人で話したい。」

「分かった。なるべく早くね。」

「ありがとう。」

そして、車内にはユキと凛の2人だけになった。そして、ユキが口を開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る