第2話 新生活

入学式の次の日、凛は渚と一緒にガイダンスを受けていた。機械工学科の新入生150人中、女子は4人。凛と渚の少し前に残りの2人は座っていた。午前中で、ガイダンスは終わり大学は放課だが、凛と渚は一緒にお昼を食べることにした。

「凛はどこ出身?」

「三重県。なぎは?」

「私は東京。しかも家は大学の近くなの。」

「じゃあ実家通いか。」

「そうなんだー。凛は1人暮らし?」

「もちろん。」

「いいなー。今度遊びに行ってもいい?」

「いつでも来てよ。」

「ずっと思ってたんだけど、前髪長すぎない?凛の顔全然見えない。隠してるの?」

「そんなことないよ。まあ、そのうち見えるよ。」

「そうかな?」

凛が顔を隠すのは、理由がある。だがまだその事を話すつもりはないようだ。その後も2時間ほど話して2人は別れた。

凛は家には帰らず、そのまま東京の街へと繰り出した。そして。とあるカフェに入って行った。名前は“カフェ NASK”。全国に店を展開するチェーン店だ。全国のほとんどの県にあり、三重県にもあるのだが、凛はNASKに来るのは初めてだった。雰囲気の落ち着いた店だった。席に着く途中、他のお客さん達はほとんど同じものを頼んでいた。彼女も席に着いて、同じものを頼んだ。

「NASKパフェ1つ。」

数分後、パフェがやって来た。本当に綺麗な見た目で、SNSにもってこいだ。彼女はそれをゆっくりと時間をかけて食べた。

店を出てから凛は、家の近くのスーパーへ寄った。もともと、NASKと凛の家は徒歩で10分の距離である。スーパーはその間にあるということからも、凛の住むアパートは条件の良いところにあることが分かるだろう。ちなみに大学までは徒歩5分である。話が逸れた。凛がスーパーで野菜を見ていると、男性に話しかけられた。

「君、K大の機械工学科の子だよね?」

凛は無視して、その場から離れる。

「あれ?違う?おかしいな。確かに今日のガイダンスで見たんだけどな。」

男性はその場に立ったまま呟いた。凛はレジを終えて買ったものをマイバッグに詰め、スーパーを出た。


次の日、履修登録を大学で済ませ、凛と渚はお昼を食堂で食べていた。すると、横に男性の2人組が座り、話しかけて来た。凛の聞き覚えのある声で。

「ほら、やっぱり。昨日のスーパーの子だ。」

凛もその男性が昨日の人だと認識した。渚が興味津々で聞いて来る。

「2人知り合いなの?」

「うん。」

「ううん。」

2人が同時に答える。もちろん肯定が男性で、否定が凛だ。

「え、ひどくない?」

男性は地味に傷ついている。それを見て、他の2人は爆笑している。渚が笑いながら提案する。

「自己紹介しよっか。まず私ね。黒木渚です。出身は東京。よろしくね。じゃあ次凛ね。」

「川瀬 凛です。出身は三重です。よろしく。」

「じゃあ次は俺。遠山 圭介です。出身は東京。よろしくな。ほら、あとお前だぞ。」

「恵美 海斗です。よろしく。凛ちゃんなんで昨日無視したの?」

「誰か分からなかったから。ごめんね。」

「あ、そっか。そうだよね。いきなり話しかけたら変なやつだよね。ごめんごめん。」

話していて、圭介と海斗が同じ高校出身で、機械工学科という事を凛と渚は知った。凛は人見知りだが、明るい2人のおかげで楽しく話せた。

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