ジャイプル 1 ピンクシティで祭りだワッショイ

 アーグラには二日いたはずだが次の日をどのように過ごしたのかまるで記憶にない。もしかしたら象さんには二日目に乗ったのかもしれない。

 そして我々のパーティもここで解散である。鈴木と木村は東へ、僕は西へと旅立たねばならぬ。お互い肩を抱き合い涙ながらにこの最果ての地を生き抜こうと誓い合った。俺がいなくて不安だろうけど負けるなよ。Bon Voyage! (実際にはあっさりと別れました)


 一人になって不安な僕は気持ちを誤魔化すため駅で大量にフルーツを購入する。バナナを1房、小さい西瓜を一つ、そしてチャイとプーリー。移動中の食事用だ。

 インドで生水を飲むのは自殺行為なので水分の補給は主にフルーツかチャイで賄っていた。ミネラルウォーターも売っているが確か20ルピーくらいして手が出せない。20ルピーあれば1回の食事代になる。インドに来て1週間もすると日本円でいくらとは考えなくなる。為替レートなんて関係ない。あくまでインド内での物価基準で判断するようになるのだ。


 さて次の目的地はジャイプルである。長距離移動を夜にすれば宿代が1日分浮くことを学ぶ。僕も徐々に旅慣れしてきた証拠だ。寝台列車は寝床が固くて狭い(幅50cmくらい)なのでお世辞にも寝心地が良いとはいえないが、どこでも寝むれることを唯一の特技としている僕にはなんの問題もない。デリーからアーグラまでは蒸気機関車であったが、ジャイプルまではディーゼル機関車だった。電車は主に都市を走る短距離で使用されているみたいだ。


 ジャイプルの建物は赤みかかったものが多くピンクシティとも呼ばれる。といっても色の濃さがまちまちで薄い色だと肌色、濃い色だと臙脂色をしているので町全体の統一感はあまりない。

 ジャイプルに到着し駅前へ出ると何やら騒がしい。大勢で大通りを騒ぎながら行進している。行進といっても整列しているわけではなく、みな好き勝手にあっちいったりこっちいったりしてはしゃいでる感じだ。お囃子?みたいな音も聞こえる。祭りだ! いやっほぅー! 人々は顔をピンク色のチョークの粉みたいなものを塗りたくっている。顔だけでなく腕や服までピンクまみれの人もいる。地球の歩き方を読んでもこの時期に祭りの情報は乗っていないのできっと小規模な催しなのだろう。それでもラッキーだ。

 10人に一人くらい四角い缶の箱(ディズニーランドのお土産でもらうお菓子の箱くらいの大きさ)を持っていて、歩きながら自分達や見物人の頬やおでこになすりつけている。僕のところにも来た。ヒンドゥーの祭りなので、ちょっと怖くなって(異教徒が参加してばちが当たらないか心配した)最初は避けていたが、何人も笑顔でお前も塗ってやるぞと寄ってくるので結局僕もピンク色に染まってしまう。

 結局1時間以上、そこで人々の流れを見学していた。


 新しい町に着いてまずやることは地元の観光局に行くことである。そこにいけば観光スポットのガイドブックがあるし、ホテル等を紹介してくれる場合もある。

 ジャイプルの観光局でパンフレットを貰う。お奨めはアンベール城・ジャイガール要塞・シティパレスといったところ。上記を明日行くことにして今日は町中にあるスポット巡りにしようと計画する。観光局で安宿をいくつか紹介してもらいまずはホテル探しだ。宿探しにエネルギーを使うのも面倒なので最初に寄ったホテルに決める。50ルピーだったと思う。僕はシャワーの水が全くでない(たまにある)とか恐ろしく汚くない限り、宿代の目安として50ルピーを基準にしていた。


 ホテルを決めて近くの市内を散策しにでかける。いろいろ廻ったと思うが全く記憶にない。まあ20年も昔の話なので仕方ない。

 ジャイプルの町をぷらぷらとしているとあることに気付く。さほどインド人が寄ってこないのだ。リクシャーワーラーは同じように小五月蠅く寄ってくるが、観光案内などと称して近寄ってくるやつがいない。これはどうしてだろうと考える。思いついたのは

1.デリーやアーグラは観光都市なので特別だった。

2.州が変わったので人間性も変わった。

3.既に1週間以上滞在しているので服装も小汚くなっているし、髭も伸び始めて、僕の見かけからインドビギナー色が消えてきた。

4.独りで行動しているので逆に敬遠されている。

こんなところであろうか。たぶん全てが少しずつその要因となっているのだろう。



※この記事を書く際にネットで調べたのだが結局その祭りの名前と目的は判らなかった。地元だけの小さな祭りだったのだろう。結局ひと月半インドに居て祭りに参加できたのはこのチョーク祭りだけだった。


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