印度放浪記

鷲峰すがお

序文

砂漠が見たかった。と書くと何を格好つけとるんじゃと言われるかもしれないが本当のことなので仕方ない。学生になって時間の余裕もあることだし、今くらいしか長期間の独り旅なんてできんじゃろと思い立って夏休みに旅行を計画した。1990年、今から25年も昔の話である。と書くと歳がばれてしまうがまあいい。それよりもその年齢でこの文章かと評価されるほうが抵抗あるけれど、そこのところは考えないようにしよう。


 語学が同級の友達にベテランのバックパッカーがいて、そいつは中国・東南アジアを自転車に乗って旅する強者であった。時はバブルまっさかりでジュリアナはまだ無かったけれど芝浦ゴールドや麻布十番のイエロー(マハラジャは既に廃れていた)とかで遊んでいた僕も基本は貧乏学生だったのでそいつに助言を求めた。

「なあ、極力金を使わないで長期間海外旅行をするにはどこがいいかな?」

「中国か東南アジアかインドだろうな」と訊かなくてもわかる答えが返ってきた。

 中国は漢字でだいたい意思の疎通はできるらしいが漢民族は何だか厭だなと当時でも思い、東南アジアならリゾートに行きたいなと考えてしまう。僕が悩んでいると「インドは旅行初心者には奨めないな。ハードだよ」と友人のアドバイスが決め手となり僕は初の海外旅行、しかも独り旅をインドに決めた。変なところで見栄を張ったのである。

「ところでインドで言葉は通じるの?」

「公用語がヒンディーと英語だから、簡単な英語が喋れれば問題ないよ」

なら問題ないだろう。僕は普段から洋楽に接しているし、それに受験英語が得意だった。


 話は変わるけど「ボーダー」という漫画をご存じでしょうか? 既存の価値観に囚われない中年主人公の生き様みたいな内容で、狩撫麻礼(オールドボーイ他)原作・たなか亜希夫(軍鶏他)画の名作漫画です。この主人公が前段にあるセリフを述べるのである。

「砂漠が見たかった」


 北西インドには砂漠があるという。1990年夏、僕の旅行先は決まった。


 ※この旅行記は25年も前の話なので、現在の為替レート・物価・名称・その他諸事情と大分違うはずです。また、カメラも持たずに旅したので全て記憶だけで記述しております(地図だけは確認しました。町の名前とか忘れているので)。多分に記憶違いもあるかもしれませんがご容赦ください。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る