第30話

 「いただきます!」

 待ちきれずに善太は料理をバクバクと食い始めた。

 「ああっ!」

 理子は小さな悲鳴を上げた。

 「うおー!超うめぇ!」

 善太が大声を上げた。おれはそれを聞いて空腹に耐え切れず、何かの和物に手を出した。うまい!今まで食べたことのないような旨みがおれの口の中に広がった。すぐにコメをかき込む。甘い!ふっくらしている!こんなコメ食ったことないぞ!

 こうしておれと善太は夢中で食事を続けた。一方理子はおれと善太を交互に気の毒そうに眺め、米を口に運んでいた。

 「ごはん、おいしいね・・・でも私、もういいや。ごちそうさま」

 「なんだ理子ちゃん、こんなにうまいのに食べないなんてもったいないなあ!じゃあ、俺にこの豆と魚頂戴」

 善太はものすごい勢いで自分の分を平らげ、理子の膳にも箸をつけた。

 「ぜ、善ちゃん・・・そんなに食べて大丈夫・・?」

「全然オッケーだよ!いくらでも食えるよこれ!理子ちゃんこれ食べないなんてもったいないなあ」

 「そうだよ理子、なんで食べないの?」

 「そ、それは、その・・・ううん、なんでもない」

 理子はおれ達の前にいるタケミカヅチをはばかる様子で黙ってしまった。タケミカヅチは目を細めて善太の食いっぷりを眺めている。

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