第26話

 「古来、音楽は様々な戦闘において士気を鼓舞する役割を担ってきました。古代は天に轟き、骨を震わせる太鼓の響き。第二次世界大戦のバグパイプの音。つまりはこうです。我々が戦闘隊形を作り、禍津久留刀布を迎え撃ちます。それと同時にギルモアヘッドに演奏をして欲しいのです。相手が相手だけに我々も戦い方を決めかねていたのです。しかしその中で太占の結果がこうであったということは一筋の光明を見出した思いでした」

 そこまで言うとタケミカヅチはガバ、とほぼ土下座に近い形で頭を下げて言った。

 「お願いします。吾らのために演奏したいただきたいのです。これは高天の原だけの問題ではないのです。あなたたちうつしき青人草の問題でもあるのです。高天の原に何かあれば必ずあなたたちの営みにも影響が出るのです。そのためにもどうか!どうか!」

 土下座と絶叫にも近い『どうか!』におれたちは圧倒されて何も言えなくなってしまった。隣に座っていたオモヒノカネと呼ばれた神様も同様に頭を下げている。おれはハッとしてオトタチの方を見た。彼女もまた正座をして、手をついて頭を下げているではないか。

 おれはどうしたらいいのか、なんと言って良いのかさっぱりわからなかった。戦闘、演奏、オトタチ、マガツクルトフ、高天の原、それらがいっぺんに頭の中をぐるぐると巡っている。

 しばらくは誰も、何も言わなかった。永遠に沈黙が続くかと思われたその時

 「わかりました。やります」

 理子がそう言った。

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