わたくしギャラクシータクシー

藤原弘夢

どうぞ!お乗りくださいまし!

 曇天の空。その下にいる童貞の俺。


 見るからに数分後には雨が降りそうな天候であった。

 俺は自転車を駅西口の駐輪場に駐車し、財布の中を確認する。財布の中には

樋口さんが一枚と10円玉が数枚だけあった。目的地への到着時間が迫ってきていることから、俺は久しぶりにタクシーを利用することに決めた。


 エスカレーターを降り、タクシー乗り場へと向かう。そこには多くのタクシーが列をなし、客がくるのをじっと待っていた。

 当然、ほとんどのタクシーが同じ型の乗用車(クラウンコンフォート)であり、車の多くは黒色で、数台黄色、エメラルドグリーンがあるくらいだ。どれも多くのタクシーと変わらない。乗窓越しに見えるドライバーの多くは白髪の目立つ中年男性であった。


 そんなごく普通の無個性な光景の中で、一際異彩を放つ1台の車が見つかった。

 車は旧車、白のシボレー。最近ではなかなかお目にかかることのできない車である。ましてやタクシーであるなんてありえない。

 俺はその白のシボレーに少しづつ近づいていき、目を凝らしてみる。さらに驚くことに、タクシーの屋根に必ずついている行灯が、その車だけおそらく段ボールで作られているっぽいのだ。


 その行灯には「ギャラクシータクシー」と太いマジックで書かれていた。


 

 


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