花の傭兵

まよなかちわわ

第1章出会い

第1話

「ちょっとこっち来て杓してくれよ」


 ヒゲ面の傭兵がテーブルに向かってゆうげをとっているウェーブした長い黒髪の女傭兵の腕を引っ張ろうとする。


 シャキーン!


 女は椅子をけって立ち上がりざまに長剣を引き抜く。


「やるか?」


 傭兵も剣を引き抜こうとするが、いつまにかそばに来た若い男にその手を押さえられた。


「きさま、なんだ?」

「こんなところで切りあいですか? 女と切りあってどうするんです? 勝っても負けてもいい笑いものですよ」


 ヒゲ面の男は腕をふりほどいて、フンと鼻を鳴らして、酒場を出て行く。


「大丈夫ですか?」


 長い黒髪を紐でくくっている若い男は、銀色の星形のある柄に剣をしまった女に声をかける。


「切りあいなら負けない」

「酒場で切りあってもなんのトクになりませんよ。……ローズ姫」

「な、なんでそれを?」

「(小言で)ここじゃ、人の耳に入る。私の部屋に行こう」


 ローズは男の真剣な切れ長の黒い瞳にうながされるようについていく。





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