第21話 再会

 自己紹介が終わると、クラスの係を決めることになった。


 僕は、中学のときと同じ図書委員に立候補することにした。どうせ高校生活も屋外での活動が制限されているのだから、校内で引きこもるなら慣れ親しんだ図書委員になって、ゆっくり本でも読みながらまったりと高校生活をエンジョイしたかったからだ。


 それに、先に立候補して決まってしまえば、なりたくもないクラスの代表である委員長や仕事の多い体育教科の担当になって体育教師の下でこき使われることにならなくて済むという理由もある。


 打算的な考えを思い巡らしていると、


「わたし、クラス委員長になります!」


 僕の考えとは裏腹に、誰もが敬遠していた委員長の座に立候補した人物がいた。


 どんな物好きが立候補したのだろうかと視線を向けると、一番前列の端に座る女子が起立して元気よく手を上げていた。


 ショートボブの髪型に、色白でクリッとした大きい目が特徴の女子だった。10人中、9人は可愛いと言うくらい整った顔立ちをしている。可愛いと思わない残りの1人は、相当に目の悪いヤツだけだ。


 僕も彼女のことを可愛いと思う1人に入るけど、どこかで彼女のことを見たような気がしてならなかった。自己紹介では、青山って名乗っていたけど、青山っていう名前の人は知り合いにはいなかったと思う……でも、なぜか気になって仕方なかった。


「誰か他に委員長に立候補する人はいませんか?」


 加山先生が教壇から教室を見回しながら尋ねるが、シーンと水を打ったような静けさで誰も返事をしない。


 ま、他に立候補がないのは当たり前。普通は1番面倒な委員を好き好んでやる人はいない。何かイベントがあれば、クラスのまとめ役として駆り出され、クラスに問題が発生すれば担任とクラスメートの橋渡し役として割を食う立場になる。担任に頼られクラスでも目立つ存在になるがゆえに、委員長のやり方次第ではクラスから厭われる存在にもなりかねない。そんな大変な仕事を立候補してくれて『やりたい!』と言ってくれるだけでも、ありがたくて感謝したいくらいだと、みんなは思っているはずだ。


「では、他にやる人もいないようなので、クラスの委員長は青山さんにやってもらうことにします」


 先にみんなが嫌がる委員長が決まったためか、他の係りや委員もすんなり決まって長かった授業時間が終わった。今日は学校全体が短縮授業で、1年生はこの後部活動巡りに当てられる。2年生や3年生も部活の勧誘に忙しく動き出すことになる。


 中学の時は、リハビリの病院へ行くために部活をする時間はなかったけど、ケガも大分良くなり高校生になって時間にゆとりができるので、僕は部活に入ろうと決めていた。もちろん運動部には入ることできないけど、文化部で何か自分に合ったものがあればと思っていた。


 僕が何の部活がいいかなぁと思案していると、不意に声をかけられた。


「晶くん、久しぶり! 元気にしてた?」


 僕の座席にやってきたのは、立候補してクラス委員長になった青山という女子生徒だった。


「え……!? 青山さん、どこかで会ったっけ?」


 僕のそっけない反応に青山さんは気分を害したらしく、ちょっとムッとした表情になった。


「晶くん、昔はあんなに仲良かったのにホントにわたしのこと覚えてないの? 薄情だなぁ…… ほら、大学病院の病室で一緒だったゆかりよ!」


 青山さんのその思ってもみない言葉に、僕は一瞬呆気に取られてしまった。

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