マッドな世界でマットに寝れるこの幸せ

花の三日坊主

序章「そんなこんなで世紀末」

「先輩、右の車からボウガン。左のからは火炎瓶。よけないと我々死んじゃいますよ~。このままだと串刺しからの丸焼けでまるで焼き鳥ですよ~」



 やばい、やばい、避けないと死んでしまう。それとなんでこの状況でそんな縁起でもないこと言えるんだよ。



「隊長ッ!もっとジグザグに走って」



 あっこいつ今舌打ちしやがったなこの野郎。俺だって必死なのに。



「自分達ここで死ぬんです?」




 そんな冷静に言うなよ。




「うるせぇ、とにかく逃げきればいいんだよフルスロットルだああああああああああああ」 




 俺はただひたすらアクセルを踏み車を加速させるのだった。



 漫画や映画の世界ばかりのことだと思っていた世紀末。しかし残念ながらそれを俺達は迎えてしまった。幸か不幸か世界を火の海にした物は核ではなかった。もっと洗練されたスマートな新型の爆弾だった。核よりも高威力で核のように汚染を大地に残すことのない優れ物。



 武装したホームレスのような輩から絶賛逃走中の俺達四人は戦争の前は大学の先輩後輩の仲だった。今となってはその呼び方の名残だけが残ったいる馬鹿のあつまり

だ。



 こいつらと世紀末を迎えるはめになった理由はかくも単純だ。大学近くの変り種のゲームセンターで遊んでいた時に戦争が何の前触れもなく始まったのだ。金持ちの道楽で始めた個人経営のゲームセンターはクレイジーな店長の趣味で核シェルターが地下にあり運よくそのシェルターに潜り込めたまではよかった。



 きっとこの時に俺たちは人生の運すべてを使い切ってしまったのだ。



 クレイジーな店長はしばらくたつと世紀末がくると喚き散らし俺達を世紀末でも生き残れるPS(パーフェクトソルジャー)に仕立てあげるとしなくてもよい善意を押し付けてきた。



 その当時世紀末なんかくるはずないと思っていた俺達は当然拒否した。どうせ第二次世界大戦の後のように勝者が勝者の法で敗者を裁いて終わるものだと思っていたし文明が滅びるまでやりあうなど微塵も信じていなかった。 



 まさか、食事に睡眠薬を混ぜられ寝ている間に爆弾が組込まれた首輪をされるとは思いもしなかった。



 おかげで戦争が終わるまでの時間(体感時間なので何年過ぎたかまでは覚えていない)ありとあらゆる軍事、薬学、サバイバル、医学等の知識を銃の扱いと共に習わされた。



 今となってそれが俺達の生きる糧となっているのは悪夢としか言いようがない。まったくお笑いだ。

 いや、笑えもしないか。



 その後俺達をPSに教育をしていた店長(爺さん)はよくわからない白い粉を吸いすぎて便所に顔を突っ込んで溺死してしまった。俺達は必死に学んだことから首輪の解除とシェルターのハッチの開け方を模索し結果なんとか二つともクリアすることができた。


 

 


 なぜ安全なシェルターから出たのかだって?。それは暴飲暴食による食料の枯渇からだ。馬鹿は教育されても治りはしなかった。



 

 シェルターからでた俺達を待ち受けていたのは殺風景な荒野だった。戦争は地形や風景までをも変えてしまっていたのだ。俺達はひとまずシェルターに戻り一晩話あった。食料の備蓄が底をつく寸前に陥った今、このまま此処にいてもジリ貧になることは確実だ。持てるだけの物資を車に積み込み新天地を目指し旅立つしかないと意見が一致した。



 ただし新天地を探しながら各々の故郷に居る家族の安否を確かめながらといったことも含まれた。皆家族が心配なのだ。はっきり言ってしまえば生き残っている可能性は限りなく低い。しかしこの目で確かめて見なければ納得ができない者達の集まりなのだ。


 いやはやとんでもなく難易度の高い帰郷になってしまった。



 かくして我々の旅立ちは始まったのであった。

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