喜びの島

歌から出た話。

今回はドビュッシーの「喜びの島」を。

遂にクラシックまで手を出してしまった。


この曲は、友達と釧路に行った時に教えて貰った曲だ。

友達は現在、2回目の大学生をしている。入学時にショパンをスラスラ弾けるようなメンツがゴロゴロいるような大学で歌を頑張っている。

歌に支障をきたすからという理由で酒を止めたくらいストイックな女だ。

そんな彼女に「釧路って喜びの島だね!」とサンマを頬張りながら言ったら

「北海道を生々しい島にするな!」と笑いながら怒られてしまった。


置いといて。

私は、サンソン・フランソワが弾くバージョンが一番好きだ。

ドビュッシーの「狂気」がよく出ているからだ。陶酔の中の狂気だ。


この人の「月の光」はあまり良くないという声を聴くが、私はアリだと思う。

ロマンチックの仮面を被ったクズ男の本質がよく出ている。

月の冷たい青白い光の中で、心も、体も、骨の芯までもが焼きつくされて

自分が誰なのかも分からないで、のたうち回る様子が表されていて、いい。

「青い炎の方が、温度が高いんだよ」とガスバーナーを操っていた中学校の時の先生の言葉を思い出す。


話が脱線してしまった。

「喜びの島」はドビュッシーの中でもかなりイカレた曲だと思う。

ピアノの技巧の高さや、「のだめカンタービレ」で出てたこともあり人気が高い曲のうちのひとつだけど、そこよりも、音の多さとロマンチックさと繊細さが狂気をベールのように覆っているところに惹かれているんじゃないかと思う。

言うなれば、美しい破滅だ。


破滅は、案外こんなものなのかもしれないと人々に呼び起させるようなそういうところがある曲だ。満月に罪を犯す、という言葉に通じる「何か」があるように思えてならない。その「何か」をわかってしまうときっと戻ってこれなくなるから、もう今は敢えて深堀りはしない。


この曲を聴くたびに「ピアノは打楽器で、男の楽器だ」ということをしみじみと噛みしめるのだ。

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