四月の風

歌から出た話。

3回目は、エレファントカシマシの「四月の風」を。

エレカシと言えば、「今宵の月のように」や「悲しみの果て」

「俺たちの明日」、「Destiny」あたりを推す人が多いと思うけど、

ここで敢えての「四月の風」というチョイス。

もう6月も末だというのに。

ひねくれ者の私の内面を映し出しているような気がする。


初めてこの曲を紹介してくれた人は、男の歌だと言った。

そして、宮本、どうしてお前はこんなに切ない歌詞を書くんだ!と言った。

当時の私にはそれが何を指すのか、さっぱり分からなかった。


酒の味を覚え、煙草にまみれた空間に出入りするようになり

仕事の辛さもわかってきて大人になった頃、何度かこの曲を耳にすることがあった。


一度目はフられた直後で、一緒に飲んでいた友達と別れ

まだ酒が足りないと独りで飲み直しに行った時のことだ。

その時は歌を聴きながら、誰かが何処かで待ってる、とか言うけどさぁ

誰も待ってないよ宮本のバカ!って無駄に歌に八つ当たりしてた気がする。

傷口に消毒液を塗られたように、歌が染みた。


二度目は転職したばかりの会社に馴染めず、上司と先輩からいびられた時だ。

この曲にはきつめの酒が合った。

残業が終わった後、駅でちょっと臭いバーボンのミニボトルを買い、

お気に入りの本と音楽を持って海の向こうの遠い町に、夜行列車で出かけた。

朝日とともに知らない町で降り、無機質な色をした川べりを眺め

ひとしきりぼーっとしたり泣いたりしたあと、何事もなかったように家路を辿り

日常に戻っていった。

明日も頑張ろう、って歌詞に背中を押されながら。



三度目は、この文章を書いている今だ。

確かに、切ない。

宮本、どうしてお前はこんなに切ない歌詞を書くんだという

年上の知り合いの言葉が、今更になってわかった気がした。


風が誘いにきたようだ、という歌詞が、

風の強いふるさとの町を思い出させたせいだろう。

昔馴染みの友達に無性に電話をしたくなった。

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