section2 Malie's origin〜変わり者の魔法使い part2
ある日、お父さんに珍しく時間があったので、お父さんに今までの成果を見せることになりました。
家の近くにある野原に一本の林檎の木が生えていましたので、そこの下で家族全員で集まって魔法を披露する、という形でした。
そして、林檎の木の下で腕組みしているお父さんの号令で披露会は始まりました。
「じゃあまずはロミア、やってみなさい」
「はい、おとうさん!」
ロミアは一歩前に出て、握ったステッキに力を込めて、
「ほのおよ、もえろ!」
と、力いっぱいステッキを振り下ろしました。
すると、グレープフルーツほどの大きさの火の玉を出すことができました。
「おお、後ちょっとでプチファイアの完成か。すごいぞ〜」
「ありがとうおとうさん!」
ロミアはお父さんに褒められて嬉しそうでした。
「では、次、ステファニー、やってみなさい」
「はい!」
姉さんもロミアと同じく一歩前に出て、
「炎よ、燃えなさい!」
杖を振りかざしました。すると 、ロミアより大きな、小玉スイカ程の火の玉を出すことが出来ました。
「うわー、やっぱりおねーちゃんすごいな。わたしは敵わないな」
「えっへん。妹に負けてたまるもんですか。」
姉さんはどうだ私のほうがすごいでしょと言わんばかりに胸を張りました。
「うんうん、ステファニーもなかなか筋が通ってていいぞ。もう少し高い温度になればプチファイアと言ってもいいかもしれないな。」
「ありがとうございます!お父さん!」
姉さんは頭を下げてお礼を言いました。
「さてと、最後はマリーかな。やってみなさい」
「はい!」
大きさだけでいったら実はロミアと同じくらいしか出せる自信はありませんでした。が、私には他の2人はまだ出来ないだろう、と思うことを密かに練習していました。
それを見せた時のお父さんやお母さんの反応がこの時は楽しみで仕方ありませんでした。
そして、緊張とワクワクを胸に抱きながら、私は一歩前に出ました。そして、
「炎よ、燃えてください!」
私はそう言いながら杖を前に突き出しました。やっぱり出せたのはロミアと同じく、グレープフルーツ程の大きさの火の玉でした。
「おおっと、マリーはまだこれぐらいしか出来なかったのか…」
お父さんがこういってた気がしますが、私は話を聞かず、そのまま続けていました。
「ねえねえお父さん!マリーこんなことまでできるんだよ!」
姉さんとロミアが出来なさそうで、私が出来ること。それは……
「あらまあ!お父さん見てください!」
「うおっ!マリーはこっちを先に覚えていたのか……?」
なんと、私は火の玉を自由自在に動かしていました。
「ねえねえ、すごいでしょ!」
私は練習通り出来て興奮してました。
「ま、マリーがそんなことできるなんて……いいなあ……」
「おおきさだとわたしとおなじだとおもってたのに……おねえちゃんはやっぱりちがうなあ」
姉妹たちが羨ましそうにこちらを見ていたので、してやったりと思いました。
「もう発動中の魔力の位置をコントロールするようになるとは……同時に教えるのは複雑になるから本当だったら出力を上げてから操作方法を教えるのがセオリーだと思っていたのだが……母さんもうマリーに教えていたのかい?」
「いやー私も知りませんね。教えた記憶はないのですが……まさか自分で辿りついたのかしらあの子は……」
「ある意味末恐ろしいな……」
お母さんの言う通り、確かにまだ火の玉を出して、出した後にそれを動かすことはまだ教えて貰っていませんでした。
でも、1人で練習しているうちに、ふと閃いちゃったんですよね。もしかして、こうこうこうすればこの火の玉動かせるんじゃないかって。
でも姉さんやロミアにうまく伝えられる自信はなかったので、1人でやってみることにしたんですけどね。
試しにやってみたら、結構すんなりやれたわけですよ。それはそれは、とてもいい気分になりました。
だから、いつお母さんに見せようかなと思ってた頃に披露会をやるとのことだったので、タイミングがよかったです。
うまく見せれて、本当に嬉しかったです。だけど、それで調子に乗ってしまいました。自由自在に動かしていた火の玉が、りんごに当たってしまい……
「おかーさん!りんごもえてる!!」
「あ!しまった!」
気づいた時には木の枝まで燃えそうになっていたのです。
「まずい!メガウィンド!」
お父さんがとっさに風の魔法で火を吹き消しました。なんとか大事にはならず済みました。そして、さっき燃えていたりんごがポロッと落ちていました。
「こら、マリー。調子に乗るからこうなるんだぞ……!」
「ごめんなさい……」
怒られてしまったので少ししょんぼりしました。けれど、
「でも、火の玉を自由自在に動かせるのは凄かったぞー。自分で考えてやったのかい?」
「うん!」
「そうかそうか。マリーは魔法の才能があるんじゃないか?」
「えへへ」
結局は褒めてくれたのでとても嬉しかったです。
その後自分で焼いてしまったりんごを少しかじってみました。少し炭の風味が混ざっていましたが、甘味が凝縮されていていつものりんごよりは美味しかったです。
その後はお昼ご飯を持ってきたりして、家族で楽しく、他愛もないおしゃべりをしていました。とてもいい思い出でした。
しかし、お父さんが私のことを心から褒めてくれたのは、これが最初で最後のことだったかも知れません。
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