勇者

涼風

勇者

勇者選ばれた人物



「勇者よ、勇者よ」


王様は言った。

なんでも魔物にとられた砦を奪還してこいとのことだ。

私は馬を走らせた。

剣を振るい、魔物の首を刎ねた。私は血に濡れたが王様は大いに喜んだ。


「勇者様、勇者様」


今度は村人が言った。

なんでも山賊を倒してきてほしいとのことだ。

私は山へと登った。

何人もの山賊を切り裂いた。中に入ると赤ん坊を抱えた女たちがいたが、宝があったと村人は大いに喜んだ。


「勇者殿、勇者殿」


教会の司祭が言った。

なんでも異端者を捕まえて欲しいとのことだ。

私は闇に紛れた。

背後から異端者をさらい、司祭に渡した。異端者は皆燃やされたが、邪魔者がいなくなったと教会の司祭は大いに喜んだ。


「勇者よ、勇者よ」


また王様が言った。

なんでも隣の国を攻め落として欲しいという。

私は剣を振りかざした。

何万という大軍を薙ぎ払い、そこの王の首を刎ねた。住民からは石を投げられたが王様は大いに喜んだ。


「勇者様、勇者様」


また村人が言った。

なんでも裏切り者が食料を持って逃げたので殺して欲しいとのことだ。

私は追った。

必死に逃げる家族を後ろから撫で斬りにした。死に体の家族に呪詛を吐かれたが村人は大いに喜んだ。


「勇者殿、勇者殿」


また教会の司祭が言った。

なんでもスラムは異端者の巣窟なので掃除して欲しいとのことだ。

私は潜った。

スラムの中から剣を振り回してそこにいるもの全てを斬った。子供の亡骸と目が合ったが教会の司祭は大いに喜んだ。


「勇者よ」「勇者様」「勇者殿」


皆が言った。

もう必要がない。むしろ邪魔なので死んで欲しいと。

私は思い知った。

処刑される直前、私の目から涙が流れたが、皆は大いに喜んんだ。



勇者都合が良い人物




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勇者 涼風 @Suzukaze

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