気ままなさいかわ幼女は異世界にて覇道を征く!

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プロローグ

1st 幼女系男子、死す

–––3月、都内某所。

とある大学の校門前。

そこには今、様々な人間がいた。

あからさまに落胆する者、はしゃぐ者、静かに涙を流す者もいれば安堵したようにため息をつく者も居た。

その中に俺、猫刄みょうじん 紅羽くれはもいた。

眼前には合格者の番号が書かれたものが掲示してある。

......いや、正確には“眼前”という表現は間違っている。

唐突だが、俺は背が低い。

それはもう低い。

具体的には160cmに届かず、155cmだと言い張るのが精一杯な程度には背が低い。

体格もその辺の女性より華奢だろうし、顔立ちも......自分で言うのはアレだけど、幼く少女っぽい顔立ちをしている。

友人曰く「100人に街頭インタビューしたら150人くらいが『可愛い!!』って言うと思う」だそうだ。

え?増えてるって?

聞いてみたら、「当たり前だろ?紅羽はそれくらい可愛いんだ...しかもこんなに可愛いのに喋り方も性格もイケメンだし運動神経いいし勉強もできるし可愛過ぎるのに一人称が俺って何もうギャップ萌えまで駆使して私を殺しにきてるだろう!?...さらにこんなに可愛いんだ!可愛いんだよっ!あぁ、やっぱり私は幸せ者だな...こんなに可愛い紅羽と同じクラスの隣の席になれるなんて......はぁ......はぁ......」と答えてくれた。

顔を上気させてこっちにゆっくり身を突き出しながら。

うん、彼女は星になった。

あ、一応とはいえ奴は女だからな?

ちなみにだが俺はそこまでイケメンはしてない。

っと、話が逸れたけども。

つまり何が言いたいかって前方にある掲示板、あることにはあるんだけど見えない。

そう、見えないんだよ......

俺がちっさいせいでな。

......ちくせう。

ま、まぁいいさ。


「もう少ししたら空いてきて見えるはず...!」


............うん。

..................あぁ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!

こ、声に出しちゃった!

うぅ、周りが不憫そうな目でこっちを見てくるぅ〜。

い、いいもん!

身長が高くたても得することなんてあんまないし?

そもそも高くなくたっていいし?

つ、強がりなんかじゃ、ないんだからねっ!

......やめよ、うん。

自分でも虚しくなってくる。

いや、身長ももう少し欲しかったけど。

数字にすると15cmくらい。

って、そんなことよりも!

空いてきたし、これなら見えんじゃね?

俺の番号は〜っと。


「お、あったあった」


......また声に。

いけないな、最近は1人になりがちだったから独り言が癖になりつつあるのかな。

頑張って治していこう。

で、えーっと......

おっ、あった!

っとガッツポーズしちゃった。

でも、いいよね?

周りは阿鼻叫喚の嵐なんだし。

まぁ、受かってたんだし、帰るかなぁ......


......っ!?


「ぐふっ......げほっ、がはっ!」


急に目の前に生まれる血溜まり。

まぁ俺が吐き出した訳だけども。

これはちょっとまずいかも......

少しずつ意識が削られていく感覚。

辺りが騒然としているのに、その声さえも耳から遠のいていく。

救急車のサイレンが聞こえる気もするんだけど......手遅れだよねぇ。

う〜む、まぁ未練はそこまで無いんだけどさ。

とはいえども、いくらなんでもねぇ?

......はぁ。

これも運命、かな。

しょうがないし、受け入れて大人しく逝くとしようか。






* * * * *






「う......ん......」


何か眩しい光に照らされた事で、俺の意識は覚醒した。


「お、気付いたかい?」


不意に背後から声をかけられた。


「っ!?」


咄嗟に反転して気配に向かって突きを繰り出す。


「ぐふぉっ!?」


くりーんひっと。

気持ちよく決まったぜ...!


「あ、あははははは。そんなに警戒しなくていいからね」


腹部を押さえ顔を真っ青にして笑ういかにも“好青年”という感じの男が笑う。

引き攣り、脂汗まみれの顔で。

着ているTシャツにはなにかのアニメのキャラクターが大きくプリントされている。

下はボロっちいジーンズ。

てゆーかここ、どこ?


「ぼ、ボロッちくないしぃ?これダメージジーンズだし! 気を取り直して......ここはね~? 所謂、死後の世界とか神界とか言われてる所だよ! どう? びっくりした?」


へぇ、死後の世界......神界......

ってか、俺声に出してたかな。


「いや、キミは声に出してなかったよ? あれ?おかしいね。だったら僕が何故か・・・キミの考えてたことを知ってたことになっちゃうね?不思議だねぇ?」


うわぁ、すごく......すごくうざい。

近年稀に見るうざさだよ。


「うざいとか、またまた心にもないこと言っちゃって!〜。あ、それでね~、僕が何でキミの考えてたこと分かったかだけど〜。それは、なんと、この、僕が!神様だからですっ!どやぁ」


......うん、あまり関わらない方がいい感じの人だって事は分かった。

はっきりと。

それとうざい。


「辛辣~。あ、でも、何でここに来ちゃったのかはわかるかな?」


「......まぁ、わかるけど」


死んだんだろうな~。

思いっきり血吐いたし。

それに死後の世界とか言ってくれてたし。


「そ、正解!でも、分かっててその冷静さは大したもんだね~」


なんか、覚悟があったというか......


「未練、はあるけど。いつ死んだって大丈夫だったからね。親戚もいなかったし」


両親だって蒸発済みだし。


「......そっか。ま、そんなことよりも~」


っていうか......今ふと思ったけど、ここまで一々癪に障る相手ってのも久々な気がする。

纏う雰囲気がイラっとくる。

あと喋り方も。


「ちょっ、待って!痛くしないで!」


「しないよ」


する意味もメリットもないし。


「......で、これから俺はどうなるわけ?」


「あぁ、えっとね?何と、キミには選択肢が2つも用意されてるよ!|

特別に《・・・》ね!」


......え?

2つって少なくね?

それで“特別に”なの?

そもそもなんで俺にその“特別”が?

色々疑問が。


「まぁ、特別は特別なんだよ〜。選択肢だって少なくはないんだよね〜、これが。だって普通の人は“記憶消去の後転生”の一択だからさぁ。あ、キミの選択肢の1つ目もこれだね〜」


何という問答無用。


「だったらもう片方は何?」


ろくなのなかったらまじで......な。


「......あ、あはは、大丈夫だよ?ってか心が読みきれなかったんだけど何するつもりかな?......うん、まぁ好き嫌いは分かれると思うけどマシなのは確実だよ?だから殴っちゃや〜よ?」


いちいちうざい。


「まぁそれなら良いんだけど。んで、どんなの?」


「そんなに焦らなくたってちゃんと教えるからぁ。えっとね、2つ目は、記憶を残したままで異世界への転生だね〜。ちなみに2つ目を選んだ場合は、何やら特典がつくらしいよ~?」


へ〜......特典、ね〜。

こいつの言うことだから信用はできないけど。


「2つ目で」


まぁ、どちらかといえばこっちの方がマシでしょ。


「あはは、だよねー。それじゃあ、後の僕の仕事はキミに特典をあげてから転生先の世界の神に引き渡すだけだね」


ふむ、特典か。


「えっと......はい、転生したらその世界の色々・・を教えてくれるスキルが特典でした~。もう渡したから、後は向こうのひとに引き渡すだけだね」


ん、何かが入ってきた感覚。

ま、いいや。


「それで?」


「あぁ、ちょっとまってね。今連絡してるから。......はい、んじゃ送るよ」


神(自称)がそう言った途端、まばゆい光に包まれた。


「っ、何これ」


「あはは、大丈夫。すぐ向こうに着くはずだから。じゃ、またね!」


「......うん」


......この時、もうあんま会いたくないな~って思ったのは......まぁ、しょうがないよね。

次の瞬間、俺を包んでる光がさらに大きくなる。

気付けば、さっきまでとは違う場所に立っていた










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如何でしたでしょうか?

次回の更新は12/3です!

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