第3話 ゴブリンとの遭遇

 目が覚めると鳥がチュンチュンと鳴いており、朝になっているのがわかった。ユグルドやサラサさんはとっくに起きているようだ。これが、今の現代っ子がたるんでいるといわれている原因にもなっているのか。




 家の外に出てみると、青空が広がっており、朝の涼しい風が通り抜けていきとても心地よかった。朝ごはんを食べるとすぐに村の入り口に呼び出された。馬車を護衛してくださる人たちと馬車の主の商人さんと顔合わせをするためだ。

 急いで駆けつける。


「ぼうず!これからよろしくな!」


 体は大きく熊を軽々と担ぎ上げそうなやつが護衛だった。思わず、警戒してしまったが話してみると意外といいやつだった。


 商人のほうは気弱そうで頼りにならなそうだったが、知識は豊富そうだった。


 「んじゃまあ、早いとこ出発したいし、行きますか。」


 もう出発するのか!?と少しおどろいたが、僕も早くスキルを獲得しに行きたかったから、何も文句はなかった。そうして、僕らは村のみんなに別れを告げて、王都へと向かった。


 旅の途中はみんな何もしゃべらなかった。なぜなら、周りのモンスターを警戒しながら進むからだ。王都までの道にはそれほど強いモンスターはいないそうだが、用心に越したことはないそうだ。


 途中の休憩場所で、僕は近くの川に水を汲みに行った。とてもきれいな川で水もおいしく最高だった。


 しかし、なにやら近くで人の声がすると思い、向かってみるとそこでは筋肉隆々としたごついおっさんと3匹のゴブリンが戦っていた。男のほうはなにやら持っている薬草を気にしているせいかあまりうまく戦えていない。僕は、助けなきゃとおもいそこらに落ちている石をゴブリンめがけて投げつけた。


「グギギ」


 うまいこと当たったようだったがあまり効いていない。そりゃそうだ。


 僕は男を連れて護衛のおっさんがいるとこまで逃げる提案をして一緒に走った。だが一緒に走っているおっさんが木の根元につまずき、こけてしまった。僕は助けようか逃げようか迷った。


「なにをしている!!さっさと逃げろ」


 確かに逃げれば僕は助かる。しかし、僕だっていっぱしの男だ。こんなところで逃げられるか。


「グググ、グガー」


 ゴブリンは僕に向かって襲ってきた。もうだめだ、そう思ったときだった。僕の体から白い光の魂が現れたと思ったら、それが一箇所に集まりだした。


キュイ-----ンという音が聞こえてなにかひとのようなものが頭上に現れた。恐怖でその姿をはっきり捉えることはできなかった。だが、そのときにその人のようなものがゴブリンに対して行ったことだけは理解できた。


「刀で切るな!体で切れ!!」


    なのに刀で切ったのだ!名刀のようであった。言ってることが意味不明だ。大河ドラマでみたことがあったから知っていたが切り方は三段突きという剣技であった。そして決定的な一言.....


もしや幕末の新撰組一番隊隊長沖田総司ではないのだろうか?


 そう思ったときには僕の前から姿を消していた。しかし、それが幻覚であろうと僕は興奮気味であった。幸いにもおっさんは見えていなかったらしい。ほんとうに幻覚だったのだろうか?しかしゴブリンの死体が転がっている。


 だが、そのときはおっさんも僕も深くは考えなかった。すぐにでも戻りたかったからだ。


 事の顛末だけは説明しておいたが、ゴブリンは逃げていったということにしておいた。


「ぼうずもおっさんもよかったなぁ。基本的にゴブリンっていうのは知能が低い分めったなことじゃ逃げないらしいからなぁ。ラッキーだったな。」


 とりあえず、動き出す馬車の中でもう一度考え直したりもしたが、ほかになにもわからないのでとりあえず今のところは王都でのスキル獲得に専念すべきだと思った。


 また一夜を過ごし、その次の日の朝には王都の城門前にたどり着くことができた。


「ヒロトくん、わたしたちとはここまでだからあとは一人で頑張るんだよ」


 そういって商人さんと護衛は中に入っていった。


「おい、ヒロト!俺を助けてくれたお礼だ。ギルドよったあとハネムーンっつうお店に来な。サービスしてやっからよ」


 どうやらおっさんは店を持っていたようだ。よかった。これで装備とかはなんとかなりそうだ。王都に入るのにもギルドでの登録にも身分証はいらないようだった。ギルドについてみるとそこで住民登録する前にステータスを身分証代わりにするからだそうだ。


 ギルドは城門入ってすぐの場所にあった。ここか。ここでやっと念願のスキルが手に入る。


「やっほおおおおい」


 そういいながら僕はギルドの中に入っていくのだった。

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