奇怪な収集をする主
奇妙な収集をする主観察
──此処で少しだけ、鈺炉と呼ばれる人物についての補足をするとしよう──
目の前にいる我が主は変わった収集癖をお持ちだ。いや…収集癖と言うより、仕事が、か? とても変わっていると言って良いと思う、それも並外れた桁違いで。
まず、普通に食べない。
客人が居る時は優雅な仕草で食事する。そこはまぁ良いとして。
問題は普段の日常生活の中の食事だ。
朝起きたら朝食だが、この人の場合は飲料物と菓子だけだ。それも途轍も無く甘ったるいお菓子(例を挙げるならばメレンゲやショコラ、アイスクリーム等だ)と香しい香りの飲料物を望まれる。(たまにガムシロップを十個くらい連続で飲む時もあるので、絶ッッッ対身体には良くないと断言出来るだろう……)
昼食はだいたい取られない。「腹が空かぬからな」と端的に切り捨て、客人が居らっしゃる時に渋々と食事する程度だ。
こちらが苦言を呈すと、ムスッとした顔で「腹が減らないのだから仕方ないだろ」と不貞腐れた子供のような顔で言われる。
これではどちらが主でどちらが部下なのか、どちらが大人でどちらが子供なのか分かったものではない。
まったく扱いに困るお人だ。我が主殿は……。
そして夕食。主は毎回のごとく、
それが途轍も無く不謹慎な上に不気味過ぎて怖い。夕食前に言うことじゃないだろう……と、こちらは思うが勿論口には出さない。怖い鋭い蛇みたいな眼で睨まれるからだ。それだけはご勘弁願いたい。流石にこちらも蛇に睨まれたカエル、これから喰われる存在には成りたくないのである。
ちなみに彼…鈺炉さんがその時いう言葉はこれ。 「これが最後の晩餐にならないと良いけれどね?」
え、いやアンタ何かしたのかよッ? ってなるので本当に心臓に悪い……。
とまァ鈺炉さんの食事について変わった事はこれくらいか……。
今その鈺炉さんは目の前で静かにファイリングしたノートを捲っている。
──何か思い当たることでもあったんだろうか?
なんて思いつつ、紅茶のお代わりをそっと注ぐ。
これがこちらのある一日の主観察の報告だった。
……ん? ノートとかは主に見られたりしないのかって?
チッチッチッこちらも舐めてもらっては困る。ちゃんと鍵付きのノートに記してるさ、見られたくないからね。
じゃあ今回はここでお開き、ということで…──。
幽黎庵の大罪録 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei
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