お姉ちゃんと不思議な部屋
すっちー
お姉ちゃんと不思議な部屋
「もう、いい加減真面目に仕事をしろ!」
ぼくの部屋にお父さんの怒声が響く。
「いつになったら仕事をするんだ? もうすぐ30歳だというのにろくに仕事をしたこともない......」
「いや、だから絵を......」
ぼくは精一杯反論しようとした。
「はぁ? 絵だぁ? こんな下手な絵を誰が買うんだ? 俺だったら買わん! それよりも就職したらどうだ?」
もうやだ......ここ1週間ずっとこんなんだ.........。
「出ていけ......」
「!?」
「聞こえなかったか? 家から出ていけと言ったんだっ!!」
まずい......。
「ごめんなさい、就職するから見捨てないで!」
「もういい! それは何回も聞いた......まともなところに就いてからまた来いっ!!」
こうしてぼくは家を追い出された。
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「はぁ............就職するって言ってもどうしたらいいんだろう?」
ぼくは昔から絵を描くのが好きで、それしかしてこなかった。中学を卒業したら美術高校に入学し、全国美術コンクールで優勝をした。高校を卒業したら推薦枠を使い、美術大学の絵画科に入学。数々の絵画コンクールで高成績を収めた。大学を卒業したら自分の描いた絵で食べていこうと、親に頼んで絵を描くための部屋を作ってもらった。しかし、現実はそう上手くいかないもので、絵は全く売れず毎日絵を描くだけとなっていたが、最近では意欲もわかず、ダラダラと過ごしていた。
「なんにも持ってきてないや......」
ぼくは公園のベンチに座り、ため息をつく。
眠いな......何時だろう?
公園の時計を見ると、午前2時過ぎ。家を追い出されてから9時間も歩き回っていた。
「おやすみなさい......」
今日は公園のベンチで寝ることにした。
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「.........はよ......はよう.........おはよう!」
「うわぁっ!!!」
僕ははね起きる。びっくりした............誰だこの女の子?
どこかで見たような気が............?
ぼくは辺りを見ながら女の子に問いかける。
「ねぇ、君」
そこでここはぼくの部屋じゃないと気づいた。
「どこだここ......」
どこかの部屋みたいだが天井、壁、床が真っ白でドアや窓が無い......その代わり壁にたくさんの絵が描いてあり、1台のテレビが置いてあった。何だろう......この
「え? ここ? ここはねぇ............私も分かんないや! えへへ♪」
この女の子の第一印象は『かわいい』だった。ストレートロングの滑らかな黒髪に、愛嬌のある顔。何故かセーラー服を着ている。背丈は僕よりも小柄なほうだろうか......?
「君は......何でここに?」
ぼくは自然と話しかけていた。
「私? 私は............分かんない.........ねぇ、
彼女は僕に問いかけてきた。
............は?
「ちょっと待って、何でぼくの名前を知ってるの?」
「え? だって私は哲君のお姉ちゃんだもん!」
ちょっと待って?
お姉ちゃん?
「いやいやいやいや、ぼくは君の名前も知らないし............」
「あ、そっか..................私は『
...............うん、これは夢だなきっと。ぼくは考える事を辞めた。
「えーっと、遥日ちゃんって呼んでいいかな?」
「えーーーー!! 哲君よりか歳上なのに『ちゃん』付けーーー?」
ぼくよりも歳上ってことは30歳以上なのか..................それなのに女子高生にしか見えないのはなんでだろう?
そうか、これは夢だった。だったらありえるか。
「ごめん、遥日お姉ちゃん」
「うんうん♪ いいんだよ~~~」
こうして、この不思議な部屋の中で彼女との不思議な生活が始まった。
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数日後。
そろそろこの夢にも慣れてきて、分かったことがいくつかある。
1、この家からは出られない
2、壁や床に描いたものが本物になる
3、本物となった絵は消える
4、テレビには僕の過去が映っている
この4つが今の段階で分かった事。ただ、夢から覚める方法は分かっていない。
「おはよう哲君、今日は何をしよっか?」
「おはよう。そうだなぁ.........遥日お姉ちゃんは何かやりたい事とかある?」
朝のやり取りはだいたいこんな会話から始まる。
「ん~そうだなぁ............あっ! 私を描いてくれない?」
「えっ!? 遥日お姉ちゃんを?」
「そうそう! 哲君の描いた私を見てみたいなぁ~?」
そう言われると、遥日お姉ちゃんが描いた『ぼく』も見てみたい............
「じゃあ、お互いに描き会おうよ!」
「え〜!! 私あんまり絵は上手くないよ......壁に描いても本物にならなかったし.........ね?」
あっ.........壁の絵って遥日お姉ちゃんが描いたものだったんだ。うん、上手くないと本物にならないんだね............
「で、でもセンスはあるよ!! ほら、あそこの犬とか!!!」
「あれはペンギンなの............」
えっ!?!?!?
「いや、そのとなりの絵だよ!」
「あれは私............」
ん!?!?!?!?
「あ、いや......その......独創的なんだよ!! そういう意味でセンスはあるよ?」
「うん、そうだね...............それでも私が描いた哲君が見たい?」
「やっぱり見たいかな。遥日お姉ちゃんが描いたぼくを」
「哲君がそこまで言うんだったら描いてみる.........」
やったーーーー!!
「ありがとう! じゃあ、キャンパスを描くね!」
ぼくは壁に鉛筆でキャンパスを描き始める。
「いつも思うんだけど、哲君は絵が上手いねぇ」
遥日お姉ちゃんに言われると照れる。
「ありがとう............」
ぼくはキャンパスを描き終えると、鉛筆を床に置く。しばらくすると描いたところの壁が歪み始め、キャンパスの角が壁から突き出てくる。ぼくはキャンパスの角を掴むと引きずり出す。こうして、描いた絵が本物になるのだ。
「さぁ、描こう!」
ぼくらはお互いに向き合って描き始めた。
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「よし、出来た!」
「やっと出来たの? 長かったなぁ............見せて見せて! ほぉーーーーーーーー!!!」
遥日お姉ちゃんがぼくのキャンパスを覗き込み、感嘆の声を出している。
「じゃあ次は自画像だね!」
「えっ!? 自画像も描くの?」
「もちろん! 私も描くからさぁ」
「分かった。描いてみるよ」
色まで塗りたかったけど、自画像は描いたことないからなぁ...............先にそっち描くかぁ。
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「よし、もうちょっとだ......」
ぼくは最後の仕上げに入っている。もうちょっとで完成だ!
「なんで真顔なの?」
「え? あぁ......気づかなかったよ」
そう言えば真顔で描いていた。
「よし完成だ!!」
ぼくは自分の自画像を壁に立て掛ける。どうだろう.........似てるだろうか?
「哲君、自画像も上手いんだねぇ......」
「いやぁ、そんなには.........遥日お姉ちゃんこそなかなか上手になってきたんじゃない?」
「え? これが? うっそぉ!」
「いや、本当だって!!」
ふと、ぼくのキャンパスに視線をやると、歪んでいた。
「嘘...............だろ!?」
「どうしたの? きゃあっ!!」
ぼくの視線に気づいた遥日お姉ちゃんは、キャンパスを見て腰を抜かしへたり込んだ。
「やめろ............出てくるな.........」
キャンパスの歪みはしだいに大きくなっていき、ついに頭が突き出る。次に手と腕が突き出てきて、キャンパスの中から這い出ようとしている。ぼくらは恐怖のあまり何も出来ずに、ただ成り行きを見ている。手際よく肩、胸、腰、足、と順番に出てきて目の前にもう1人のボクが立ち上がる。
「お前は............ぼくか?」
「あぁ、そうだよ? ボクは君さ!」
ボクがぼくに近づいてくる。
ゴッ!
「がはっ!!!」
ぼくはボクに押し倒され、床に頭を強打した。
「何をする!? こんなぐぇ......」
「お前が悪いんだっ! お前が働かないから死んだんだろ!?」
ぼくはボクに馬乗りにされ、首を絞め続けられる。必死に抵抗はするが、頭を打ったせいもあり上手くいかない。
「はっ! ざまぁねぇな!!」
苦しい。
「もっかい死んじまえよ」
ボーッとしてきた。
「死ね」
目の前が暗くなる瞬間、視界の端で遥日お姉ちゃんが笑っていた。
「じゃあね」
㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙
「.........はよ......はよう.........おはよう!」
「うわぁっ!!!」
僕ははね起きる。びっくりした............誰だこの女の子?
どこかで見たような気が............?
ぼくは辺りを見ながら女の子に問いかける。
「ねぇ、君は......何でここに?」
ぼくは自然と話しかけていた。
「私? 私は............分かんない.........ねぇ、哲君は何でまた来たの?」
㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙㊙
【あとがき】
どうも、しょうもないような作品を書いてるすっちーですよ!
不思議な作品が出来ましたね............
謎ですね!
ではまたどこかでお会いいたしましょう♪
お姉ちゃんと不思議な部屋 すっちー @SUCCHIY
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