第4話

(4)


人が生きていくために必要な事は今も昔も、未来も、変わらないと思います。昨日は明治のカールの販売が縮小されるというニュースを見ました。そしてカールを久しく食べていない事に気付きました。

2081年の世界を僕の意識が駆け回ります。何か手がかりを探したいけれど、誰かに聞くわけにもいかない。試しにセブンイレブンから出てきた女性に話しかけてみます。


あの、すみません。ちょっとよろしいでしょうか。


全く無視されます。そりゃそうです。向こうは僕の姿が見えていない。僕はこの世界に触る事が出来ない。絶対に。うっかりしてましたが、僕は2017年の5月27日にいます。夕暮れ時です。想像の世界で2081年の5月27日にいるだけですので、声をかけても返事はあるわけが無い。ん?もしかしてそこを頑張ったら想像の世界で返事が来るかも知れません。もうちょっと頑張ってみます。


あの、


ごめんください。


あーダメか。もっと寂しそうな人を探そう。このハゲたおっさんはどうでしょう。2081年にもハゲはいました。


すみません!


ちょうど夕暮れ時の夕陽が美しくおっさんのハゲ頭を照らしたその時、さっきのセブンイレブンから出てきた女性が歌い出したんです。歌というか、ため息の様な、風の様な、オカリナのロングトーンの様なとても真っ直ぐな、美しい声でした。


トゥーーーーーーーーー


今ちょうど、町中がその声に包まれています。気付いたらハゲのおっさんも同じ音程で歌い出しました。

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